関内イノベーションイニシアティブ(以下、Kii)の代表治田が「いまぜひお話を伺ってみたい!」と思う方をゲストにお迎えして本音トークを繰り広げる、「治田友香のスパイシー談義」。12/17(火)の開催で第5回目を迎えました。
今回のテーマは、「お笑いは社会問題を解決する!?~お笑い×ソーシャルビジネスの可能性を探る~」。
ゲストは太田プロダクション所属・養成所講師のヤマザキモータースさんです。
明治大学在学中にアルバイトの仲間と「ノンキーズ」を結成しお笑い芸人としてデビューしたヤマザキモータースさん。オールナイトフジなどの勝ち抜きネタ番組でチャンピオンになり、爆笑オンエアバトルやボキャブラ天国などの人気番組でも活躍、秋元康プロデュース作詞のもと歌手としてCDも4枚発売されるなど多彩な才能を発揮されてきました。
現在は太田プロエンターテイメントカレッジの養成所講師や「モータースLIVE」の主催などを務めており、ブルゾンちえみなど有名タレントの輩出や若手芸人の成長、活躍へ貢献されています。
2019年8月には太田プロ初のビジネスマン向けセミナー「お笑いから学ぶ、常識から半歩ずらす発想術」を開催、その他にも一般企業で研修を行うなど、「お笑い」を社会や日常に役立てる活動もされています。
今回のスパイシー談義は対談形式で進行しました。当日のレポートをお届けします。
今回のゲストスピーカー
株式会社太田プロダクション
ヤマザキモータースさん
◆プロフィール 1992年、明治大学在学中に同じカラオケパブのアルバイト従業員同士として知り合った白川安彦(現・放送作家)と「ノンキーズ」を結成(ツッコミを担当)しデビュー。 「爆笑BOOING(関西テレビ)」や「オールナイト・フジR」などの勝ち抜きネタ番組でチャンピオンになる。 また、「爆笑オンエアバトル」や当時全盛を極めていた「タモリのボキャブラ天国」でも活躍し、秋元康プロデュース・作詞のもと歌手としても活動。 ノンキーズ解散後2004年に「山崎末吉」を結成し再度ツッコミとして活動開始するも、2005年に急性散在性脳脊髄炎を発症し、長期入院・リハビリの為、2007年にコンビ解散。 2008年「くらげライダー」としてコンビとして芸人活動に復帰する傍ら、養成所講師として、ワタナベコメディスクールにて2007年より芸人コース授業を担当し始め、ブルゾンちえみなど有名タレントの輩出にも貢献。 現在は、太田プロエンターテインメントカレッジ(以下、カレッジ)の芸人コース講師を担当。 また、若手芸人の成長、活躍の場として毎月「モータースLIVE」を主催している。 2019年8月には太田プロ初のビジネスマン向けセミナー「お笑いから学ぶ、常識から半歩ずらす発想術」を開催。
・ビートたけしさんに感化されお笑いの世界へ。いま取り組むのは「表現力」と「演技力」
・お笑いライブだけでは生活が成り立たない―若手のために発表の場を作り続ける山崎さんが感じる業界の難しさ
・社会でなぜ今「お笑い」が求められているのか 問題解決に「お笑い」の力が生きる理由
ビートたけしさんに感化されお笑いの世界へ
いま取り組むのは「表現力」と「演技力」
治田 今私の方からプロフィールの紹介をさせていただきましたけれども、そもそも芸人を目指したきっかけをお話いただけますか。
ヤマザキモータースさん(以下、山崎さん) 僕らの世代の典型的なパターンなんですけど、ビートたけしさんにやられまして。オールナイトニッポンやラジオで知って、なんだこれはと衝撃を受けたのが中学生くらいの時。お笑いだけじゃなくて生き方を含めて、当時たけしさんが日本で一番影響がある人だったと思うんですね。本も読み漁って、たけしさんの本をバイブルにしていました。
治田 今のお仕事をもう少し詳しく伺いたいんですけど、具体的にはどんなことをされているんですか。
山崎さん 一応タレントとしての籍もあるんですけど、それよりも裏方の仕事を多くやっています。主に講師とライブの主催。それと、個人的に松村邦洋のネタづくりはマンツーマンで一緒にやってます。
治田 太田プロエンターテインメントカレッジ(以下、カレッジ)の芸人コースの講師もされているとのことで、授業では具体的にどういうことを教えてらっしゃるんですか。
山崎さん お笑いの方程式みたいのも教えてたりするんですけど。ただ、10年講師をやってみて、一年間通う中でそこまで習得できる人はなかなかいないと思っているんです。
今は、声を大きくすることと表情を豊かにすることの二つを重点的にやっています。
表現力、演技力を一年間でできるだけ磨いて土壌さえ作ってあげれば、その後違う場所に行ったときに自分でどんどん吸収して、自然と伸びて行くんです。
治田 声を大きくするっていうのは、具体的にどんなことを?発声練習ですか。
山崎さん 発声もありますし、あとは「とにかく大きい声を出そう」という意識と、恥ずかしさを捨てること。これに尽きるかなと思います。恥ずかしさを捨てるっていうのは、別に服を脱げとかではなくて。気持ち的なところですね。
昔、太田プロの小さい稽古場でのネタ見せの前に、皆、偉い人に聞こえないようにちっちゃい空間でこそこそ話してた時があったんですよね。その時に、有吉とか後輩たちが「こそこそ話すのって面白くなくないですか」と言ったんです。「『聞いてください〇〇さん~昨日飲んでるときにこんなネタやったんですよ』って上の人達も巻き込んで参加させてあげて、一緒に楽しいものをつくらないと駄目なんじゃないか」って、21, 2の彼らが言っていて、若いのに偉いな、と。
やってたネタ自体はもしかしたらしょうもないことだったかもしれないけど、それも込みで「笑われてもいいから皆で笑おうよ」って空間をつくらないといけないんだな、と思いましたね。
治田 声を大きくだしてると自分も元気になりますしね。
山崎さん でも大きな声を出すことが絶対に良いわけでもなくて。印象的だったのが、秋元康さんが映画主題歌の凱旋前に決起会をやったとき。
秋元さんがドアを開けて入ってきた瞬間にばーって拍手が湧きあがって、その後挨拶があったんですけど。めちゃくちゃちっちゃい声でしゃべったんですね。皆、えっ、という感じの反応で。
後から、「なんであんなに小さい声でしゃべったんですか」って聞いたら、あれはわざとだと。「手前味噌だけど、皆自分の言葉を聞きたがっている。そういうときは敢えて小さい声でしゃべる」と言っていたんですね。確かに、その方が言葉に重みが出るし、場に緊張感も走る。それを聞いてなるほどな、と思いました。
治田 演出してるんですね。そういう一つ一つのシーンから得られるものを生かして授業をやってらっしゃるのかなとお見受けしました。
お笑いライブだけでは生活が成り立たない
―若手のために発表の場を作り続ける山崎さんが感じる業界の難しさ
治田 山崎さんは売れる前の人達に発表の場を作るということで6年ほど前から「モータースLIVE」をやってらっしゃいますよね。どんな思いでそういう場を提供してこられたんですか。
山崎さん ぼくはもともと学校の先生になりたかったんですよ。講師をやっていて、教えるのは性に合ってるなとも思って。それで、ゆくゆくは裏方でプロデュース業みたいなのをやっていきたいなと思っていました。
でも結局、単純に「山崎さんのおかげで今がある」って言ってほしいっていうだけかもしれません(笑)
ライブ主催をしても収入なんてほとんど入ってこないですからね。
若手芸人ってホントにお金がないんです。それこそライブって彼らにとって全然お金にならない。チケットが大体1000円くらいで多くて30,40人くらいのお客さんが来て、それで20組くらい芸人が出る。そしたら芸人はほどんどお金もらえないんですよね。
治田 テレビに出ている人はそれなりにお金になるけど、そうじゃない人はお金がないということですよね。
ここの近くに「厩の食卓」っていう横浜ビールさんがやっているレストランがあるんですけど、夜に突然店員さんが歌いだすんですね。そこで働いている子たちは芸術家の卵で、発表の場が欲しいということで、そこで働きながら芸術家として成長する機会を得ている。
それが飲食店の人手不足の解消にもなっているんです。そういう形はどうなんでしょうか。
山崎さん 似たようなもので、昔からショーパブというのもあったんですけど。難しいのが、若手がやってるお笑いってお酒飲みながら見るネタじゃないんですよ。けっこう集中が必要で。その点、モノマネ芸人はそういう場に向いているんで、若い時から結構食えてる人は多いんですけどね。
治田 そっか、テクニックが違うんですね。お金にならないけどお笑いが好きで継続していきたい、という人を応援する仕組みが必要ですね。
社会でなぜ今「お笑い」が求められているのか
問題解決に「お笑い」の力が生きる理由
治田 2019年8月には太田プロ初のビジネスマン向けセミナーの講師を務めてらっしゃいました。今日のテーマでもありますが、お笑いは日常生活とかビジネスの現場にどんなふうにお役に立つというふうに考えてますか。
山崎さん 最近ね、新入社員研修とか、一般企業に研修の一環として呼ばれていくことが結構あるんです。プレゼンとかコミュニケーションとかをどうやったら上手くできるかというような相談を受ける。ぼくはそれに合わせて講義をするわけではないけど、生徒に教える時と同じような感じで大喜利やってみましょうか、という形でやると反応が良いですね。
NHKでも2, 3年前から「芸人先生」という番組が放映されているんですが、それはいろんな芸人が企業にいって別の視点から悩みを見て一緒に解決しましょう、ということをやっている。それを見て今ぼくがやってることも意外と役に立つんじゃないか、と思ったんですよ。
治田 今、研修の形で新しい業態を広げている会社さんが結構あるんです。そういった意味で、「お笑い」ってきっかけとしてすごくいいなと思っていて。
私たちがソーシャルビジネスの担い手育成に取り組んでいる中で、社会問題を頑張って掘り下げようとしても、真面目なだけではなかなか広がっていかない。お笑いは共感を呼ぶプレゼンの力がすごくあるんじゃないかなと。そんなところでぜひご一緒できたら面白いなと思っています。
それこそある大手の企業さんは今、地方創生で若い芸人さんたちをまちづくりの現場に出してたりとか、介護の現場に出したりとか、とチャネルを色々増やしていますよね。
ソーシャルビジネスの領域でいうと、たかまつななさんという若い芸人さんがいらっしゃるんですが・・・
山崎さん 彼女、教え子です。
治田 あ、そうなんですか!彼女は社会問題をお笑いという切り口から発信しているのがすごく面白いなと思います。そういう取り組みが広がっていくことで「お笑い」の力が発揮される場が増えたり収入源になったりする仕組みが必要だと思うんですよね。ビジネスモデルまで行かなくても、なにか仕組みが考えられたら面白いのかな、と。
山崎さん たかまつななの話でいうと、笑わせる側の人間が難しいこと言ったら笑えないから、そこは裏方の人間がやってあげて別の人間を表にバーンって出してあげる、という仕組みは大事だなと思います。
上島竜平が、あるTVにコメンテーターに呼ばれていったことがあるんですけど、番組を見たダチョウ倶楽部リーダーの肥後さんは「あれはだめだよ」、って言ったんです。そこで別に偉そうに何かを言ったわけじゃないけど、あの立場になったら竜ちゃんみたいな芸風の人の話は笑えないよって。そこから一切コメンテーターの仕事はやってないそうなんですね。
やっぱり上島さんとか出川さんとか、ずっと「バカ」でいてほしいじゃないですか(笑)
治田 分かる気がする(笑)適材適所があるかもしれませんね。
山崎さん 合う人もいますけどね。有吉くんは絶対ドラマでなかったり劇団ひとりはずっとネタをやってたり、そういう風に棲み分けをしっかりして、自分のプロデュースをしっかりするのも大事だと思います。
最後に
ここには書ききれないませんでしたが、様々なお笑い芸人にまつわるエピソードなども交え、軽快なトークで場を盛り上げてくださったヤマザキモータースさん。
当日は高校生から50代の方まで幅広く20名以上の方にご参加いただき、トークが終わった後も「こういう場所でもお笑いが生かせるのでは?」と参加者の方の間でも意見交換が交わされる場となりました。
ヤマザキモータースさん、参加者の皆さま、ありがとうございました!
text mayu setogawa