2026年3月23日、神奈川県住宅供給公社と関内イノベーションイニシアティブの共同企画によるトークイベント「with Public」の第3回が開催されました。
今回のテーマは「団地×大学」です。人口減少や超高齢化といった課題を抱える中、団地を舞台に「学生」と「住民」がどのようにつながり、新たな多世代交流を生み出しているのか。現場で活躍される実践者の方々による、熱いトークが展開されました。本記事では、その様子をレポートします。
「ありがとう」の連鎖が学生を成長させる。
竹山団地×神大サッカー部の心温まる交流

神奈川大学サッカー部監督の大森酉三郎さんからは、横浜市・竹山団地における学生の居住と地域交流のユニークな取り組みをご紹介いただきました。
現在、サッカー部の学生たちが実際に団地に居住し、清掃活動をはじめ、スマホ教室の先生役、子どもたちの宿題サポート、健康体操などを通じて住民の方々と日常的に交流しています。
大森さんによれば、「サッカーには高い社会性が必要であり、団地での共同生活や住民との触れ合いを通じて、学生たちのコミュニケーション能力や共感性が育まれている」とのこと。住民の方からの「ありがとう」という言葉や、手作りの煮卵をいただくような温かいやり取りが学生を大きく成長させており、こうした環境からJリーグデビューを果たす学生も輩出されているそうです。
建築、デザイン、サウンド…
専攻を越えた学生たちがつくる団地の新しい居場所「みどりば」

東京工芸大学工学部教授の森田芳朗さんからは、厚木市・緑ヶ丘団地を舞台とした「ミドラボ」プロジェクトについてお話しいただきました。
団地周囲の過剰なフェンスを外して地域とつなぐ「オープンストリート」構想を描き、使われなくなっていた集会所を「みどりば」としてリノベーション。建築やデザイン、サウンド研究など、様々な専攻の学生がそれぞれの得意分野を活かして場づくりに参加しています。
また、人だけでなく、チラシやプランター、ベンチといった「モノや空間」もハブとなり、住民同士の自然な関わりを生み出している点も大きな特徴です。デザインや空間が持つ、コミュニティ形成への可能性を感じる事例でした。
住民の「生の声」は清掃員に集まる。
日常のやりとりが支える団地のセーフティネット

隼ファシリティサービスの田中隼平さんからは、六ツ川の団地における清掃業務と理事会支援の事例をご共有いただきました。
隼ファシリティサービスは、地域住民を清掃員として雇用することで、地域内での経済循環を生み出しています。さらに興味深いのは、団地の清掃員が住民のちょっとした困りごとや情報が集まる「コミュニケーションのハブ」として機能しているという点です。
日常の何気ない挨拶や立ち話が、住民の孤立を防ぎ、コミュニティを根底から支える大切な役割を果たしているというお話は、これからの地域づくりにおいて重要な視座を与えてくれました。
挨拶からはじまり、やがて「見守る」関係へ。
学生と住民の温かいコミュニティの作り方

イベント後半は、「学生はどのようにして昔からのコミュニティに馴染んでいったのか」「主体的に関わるモチベーションはどこにあるのか」といった、参加者からの質問を交えたトークセッションが行われました。
大森さんからは、「まずは自治会など、既存の住民組織としっかり関係を構築することがベースにあった」との回答がありました。はじめは学生に対する不安の声もあったものの、日々の挨拶や交流を重ねることで、次第に住民が学生を教育し、温かく見守るような関係性が築かれていったそうです。
森田さんの事例においても、団地に居住する学生が橋渡し役となり、自然な形で交流が地域へ広がっていったことが語られました。「学生一人ひとりに負担を集中させすぎず、自発的な活動をサポートする環境づくり」が重要であるというご意見には、多くの参加者が深く頷いていました。
おわりに
「団地」という歴史あるコミュニティに、「大学・学生」という若い力が掛け合わさることで、単なる社会課題の解決にとどまらない「新しい暮らしの価値」が生まれていることを実感する時間となりました。
地域全体で若者を育て、若者がまた地域に活力を還元していく。これからの時代に求められる、温かく持続可能な循環の形が提示された、非常に有意義なイベントでした。
次回の開催が決まりましたらHPでお知らせいたします。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
