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70seeds代表・岡山さんが考える、PRの本質的な役割と上手な活用法

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関内イノベーションイニシアティブ(以下、Kii)の代表治田が「いまぜひお話を伺ってみたい!」と思う方をゲストにお迎えして本音トークを繰り広げるイベント「スパイシー談義」。
 
第4回目は11月19日(火)に開催しました。今回は「ソーシャルイノベーションを世間に定着させるためのPRの役割とは」と題して、70seeds株式会社代表取締役の岡山史興さんをゲストにお迎えしました。
 

今回のゲストスピーカー
70seeds株式会社 代表取締役
岡山史興さん


岡山史興さん

◆プロフィール
世の中の「人・モノ・こと」の関係性を編集する70seeds株式会社の代表取締役でウェブメディア『70Seeds』編集長。
多数の企業・自治体にて事業開発やPR・ブランディングを手がける。生産者支援プロジェクト「できる.agri」発起人。

▶︎70seeds株式会社:https://www.70seeds.jp/
▶︎できる.agri:http://dekiru-agri.jp/

 

 

 

「世の中の新しい当たり前を作っていく」
70年という長い時間軸でものごとを捉える理由

 
岡山さんが編集長を務めるウェブメディア「70seeds」は、「次の70年に何を残すか」をコンセプトとして運営されています。ページビュー数を重要視している多くのウェブメディアとは違い、70年という長い時間軸でものごとを捉えています。
 
名前の由来は、リリースした2015年が戦後70年の節目だったから。
当初は戦後70年間で何が起きたのかを広めることを目的にしていましたが、現在は次の70年に目を向けて運営しています。これから社会を変えていくスタートアップやスモールビジネス、地域の取り組みを取材することで、「世の中の新しい当たり前を作っていく」ことを目標に掲げています。
 

 
「70seeds」が生まれたのは、岡山さんの高校時代の経験がきっかけでした。当時、平和を求める声を署名で集める活動を行ったり、長崎で選ばれる「高校生平和大使」に任命され、国連で平和をアピールする役割を経験しました。それから20年以上、平和をテーマに活動しています。
 
そして、大学進学で関東へ来た岡山さんは、周りの人と「平和」への関心や熱量の差に衝撃を受けました。
「世の中には知識や関心が違う人たちがたくさんいる。『平和が大事』『戦争反対』とただ叫んだり、デモ行進をしたり、署名を集めたりしているだけでは何も変わらない」
 
そう気づいた岡山さんが自分が取り組みたいことを考えたときに興味を持ったのがPRでした。
 
 

人々の生活の変化を目の当たりにして実感した「PRの力」

 
新卒でPR会社に入社したものの、ビジネスの現場と「平和」の間に距離を感じていました。しかし、「バーミキュラ」という鍋のPRに取り組んだことが転換期に。
バーミキュラは、名古屋の町工場が技術力を生かして製造した世界品質の鍋。「いいものができたけど売る自信がない」と相談を受け、広告費ゼロの中で知恵を絞って立てたPR戦略が上手くはまり大ヒットしました。
 
それにより町工場の人達がテレビに出るなど生活が激変した様子を目の当たりにし、優れた技術者に貢献できるPRの仕事の良さを実感しました。
 

 
もう一つ、PRの力を実感した出来事は、2011年Googleから中小企業向けウェブサイトサービスのマーケティングに関する相談を受けた時。
震災後ということで東北を重点的に回って支援を行い、中小企業の人達と一緒に「良いものを持っているけど広げ方が分からない」ところから形にするプロセスを通して、気づいたことがありました。
 
「仕事がなくなっていく」「震災の被害にあってどうしたらいいかわからない」と目の前の生活に向き合う人に「戦争反対ですよね」「原発なくしましょう」と漠然とした話をしても伝わらない。
目の前の生活がこう豊かになる、と具体的に分かって初めて「平和」を実感できる。一人一人の目の前の「平和」を実現していかないと世の中平和にならない。
ちょっと飛躍しますけど、「平和ってこういうことだなあ」と思ったんです。
 

 
東北の支援をする中で、地方を元気にする重要性も痛感。地方は機会や情報、収入などの格差が大きく、地方創生という名で出る助成金の使い方も改善の余地があると感じました。
どこの地方でも農業があり、生活インフラを支えている。農業は地方に必要不可欠なものであり、農業を元気にすることが地方を元気にする。そんな思いも後押しし、岡山さんは現在富山県の舟橋村に住んでいます。
 
地方で農家の人達と一緒にプロジェクトに取り組み、PRの力を実践の場で生かす。その結果、世の中の平和を実現することが今の人生のテーマです。
 
 

「平和」への温度差に衝撃を受けた学生時代。
「他人事」を変えるために仕掛けたこととは

 
治田   「平和」という発信するのが難しいテーマに取り組んでいて、でもお会いしたらすごく柔らかい方で。面白い人だなって思ったんです。
 
岡山さん ありがとうございます(笑)
 
治田   それも高校時代から本格的に活動している。でもさっきのお話で、関東に出てきて皆がそれほど熱くないことに衝撃を受けたっていうのは、そこは意外とピュアなんだなって思いました(笑)
 

 
岡山さん いや、想定以上の熱量の差だったんです。周りにこういうことやっててね、みたいな署名の話とかをすると、三パターンの反応がありました。
 
一つは、なにそれ、とひいた反応をする。でもそれは意外と少なかったんです。二つ目は、まあまあ興味を持ってくれる。マスメディア系を志してる人は応援してくれる人も割といました。
最後に、一番多いのが、「すごいね」っていう反応。他人事なんです。自分とは関係ないけど、なんか立派なことやってるね、っていう感じでした。
 
治田   それに対して何か仕掛けたことはあったんですか。
 
岡山さん 署名活動と、あとは「平和」を可視化するために 「アイラブキャンペーン」をやりました。”I Love NY”のロゴあるじゃないですか。あの NY のところを空欄にして、「あなたにとっての大切なもの」を書いてもらって。「それがあなたにとっての平和です」とそれぞれの「平和」を集める活動をNYで始めて、全国の森ビルでもやりました。
 

 
治田   私もNPO法をつくる活動のときに初めて署名を集めて、全国で3000人ぐらい集めたんですけど。その時はネットも普及してないし、どうやったら沢山の署名を集められるのか分からない中やりました。岡山さんが署名活動されたときはどうやったんですか。
 
岡山さん 仲間が自分の高校で友達に声かけて集めることもありましたけど、公立高校は校内での署名活動は禁止で。街頭で書いてもらうのが一番多かったです。
 
「署名活動するから取材しに来てください」と地元のテレビや新聞に取り上げてもらって、その時からメディアをどうやって動かしていくか、というのを考えてました。
 
 

ソーシャルイノベーションを起こすPRとは。
刺さる伝え方と、PRとの上手な付き合い方

 
治田   ソーシャルビジネスはPRって難しいと感じているんですけど。上手く伝えるためにこだわってることはありますか。
 
岡山さん ソーシャルビジネスは、PRで動かすべきは万人じゃないっていうのを理解した方がいいと思ってます。「皆にとっての平和」じゃなくて「自分にとっての平和」をそれぞれに合った形で考えないと誰にも刺さらないというのを社会に出て肌で感じたので。
 
治田   「自分が言ってることを分かって」じゃなくて、「あなたにとってどうなのか」っていう投げかけをした方が回り道のようで刺さるっていうことですよね。
 
岡山さん そうです。例えば、「農業やってる人たちの所得改善をするためにはどうしたらいいか」が農業をする人達にとっての平和のテーマだし、「東京で販路を持ってものづくりの商品を売っていくためにはどうすればいいか」がある企業で働いている地元の数百人の平和のテーマだし。
 
その人にとっての具体的な「平和」を伝えないと誰にとっても他人事で終わってしまうと思っています。
 

 
治田   PR って聞くと膨大な数の人達に訴えかけるようなイメージがあって、PR コンサルに相談をすると一体いくらかかるんだろう、と少し不安で。巷にいる PR コンサルってちょっとガツガツしてる印象で。
何か一つ頼んだら何百万とかって言われそう、とか思ってしまってたんだけど、実際どうなんだろう(笑)
 
岡山さん そんな悪い人多くないと思いますよ(笑)結局何のために仕事しているかの違いだと思います。
社会活動に寄り添ってらっしゃる方もいれば、とにかく金稼ぐことが一番だって言ってガツガツ仕事してる人、自分のスキルをどう人に認めてもらうかみたいな形でやってる人もいる。本当に千差万別です。
 
ただ、近年は社会的な課題に対して意識をもってやっているプロフェッショナルが増えてるなという感覚はあります。
 
治田   なるほど。でもソーシャルビジネスってお金に余裕がないけど、ソーシャルビジネスだからお金払わなくていいということはない。だからソーシャルビジネスって、PRとの付き合いが圧倒的に慣れてない。慣れてないから伝わらなくて空回りしてしまう状況が起きていて、どうやったら突破できるかな、と思っています。
 

 
岡山さん 地方や農業も似た状況で。ただ、より問題なのは助成金が出やすいこと。何かしら名目がついてお金がつくと、目の前のことだけ考えて使ってしまうことも多い。助成金もちゃんとプロに相談して使うことが大切だと思います。
 
例えばNPOの助成金が50万円おりました、という時にその50万円を何に使うかはめちゃくちゃ大事で。会のパンフレット新しくしましょう、イベントやりましょうとかになりがちだけれども、それってだいたいその場で終わりなんですよね。そうじゃなくて、この50万円を使って次に500万円手に入る仕掛けをどうやって作るかをアドバイスできる人が必要だと思います。
 

「日本一小さい村との二拠点生活」と「できる.agriプロジェクト」
で目指す地方への貢献

 
治田   今取り組まれている農業も、色々課題がある分野じゃないですか。それでも農業に取り組む理由をもう少しお話しいただけますか。
 
岡山さん いろんな地域の中小企業の方と関わっていく中で、この人たちが豊かになる手助けをしたいと思ったんですよね。その中でも、必ずどこの地域にもあって共通の悩みを抱えているのが農業だと思ったんです。
 
農業が地域のインフラになっていて、ここが変わらないと地域は丸ごと沈む。逆に言うと、農業が稼げる産業になれば地域はもっと元気になる、と見えてきて。
 
治田   PR っていう観点から掘り下げていって、地域経済の活性化を考えた時にテーマが農業がいいんじゃないか、ってなったんですね。
 
岡山さん 「できる.agri」という企業さんとコラボレーションして各地の農家さんを支援するプロジェクトも今取り組んでいるのですが、始めるきっかけになったのが、ある会社に自社のIT農業の製品を農家さんに広めていくためにアドバイス欲しいと頼まれたことで。
 
でも自社の製品をどう売り込むかより、農家さんの課題に対してどう貢献していくかの姿勢とか信頼を見せていくのが大事ですよね、という話からこのプロジェクトが立ち上がりました。
 

 
治田   あと生活について伺いたいんですけど、二拠点居住されていらっしゃるんですよね。
 
岡山さん そうですね、今東京と富山を行き来しています。元々、富山の舟橋村には「日本一小さい村」ということで取材に行ったんです。長く続いた市町村合併のブームの中でも合併してこなかったから、結果あの日本一小さい状態になった。その過程の考え方に非常に共感したんですね。
 
合併すると子どもたちがそれぞれ別の学校に行かなければいけなくなってしまい、教育水準も地域のアイデンティティもばらばらになってしまいます。それよりも、村の中で自分たちで教育水準を高めながらその村の子どもとしてのアイデンティティを大事にしたい、と考えた。
 
でも合併しなかったら当然補助金も出ないので、税金を上げる必要がでてくる。それでも、住民たちは税金上げてもいいから村の環境を守っていこう、と判断してきたそうで。
そういう話を聞けば聞くほど子育てに理想の環境だと感じて、移住をしました。
 
治田   縁もゆかりもない場所でしょ?生活も変わって、行ったり来たりも大変だろうし。すごいですね。
 

 
岡山さん 多少苦労を周りにかけています・・・奥さんとか、今日も来てるうちの社員とか。すいません(笑)
でも子どもが産まれてから、やっぱり子どもが自分の判断基準になって。都会で満員電車で通学している小学生を見たときに、うちの子どもはこんな殺気だったところで通学させたくないなあと思ってしまって。
 
価値観が共感できる人たちが周りにいる中で子育てをする安心感を考えると、東京でそのまま育てるよりは地方がいいと考えていた時にちょうど舟橋村に出会って。ここで子育てをしようと決めました。
 
ただ、向こうに完全移住してるわけでもなくて、東京と行き来をしたり全国あちこち行ったりして仕事していて。それによって溜まる価値でその村にも貢献できるんじゃないかなと考えています。
 
 

最後に

 
この後、若い世代にもっと「平和」に関心をもってもらうための企画をしている方や、NPOの運営をしていてPRに悩んでいる方など、参加者の方からの個別の相談にもじっくりお応えくださった岡山さん。
 

 
「平和」「ソーシャルビジネス」と聞くと「自分にはちょっと難しそう」、逆に「PR」と聞いただけで「うちはお金がないからできない」と、ともすれば「他人事」として敬遠しがちな方も多いかと思いますが、それを「自分事」として捉えるきっかけになるイベントになったのではと思います。
 
改めて、貴重なお話をいただいた岡山さん、そして参加いただいた皆さま、ありがとうございました!
 
 
次回のスパイシー談義は2月18日(火)、テーマは『金沢のまちの編集作法―暮らしと経済の両輪で考える―』です。次回もたくさんの方のご参加お待ちしています!
 

 
▼詳細はこちら
https://massmass.jp/event_and_school/202002218/
 
 
text mayu setogawa
edit/photo hiroyuki horigome

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