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【レポート】キックオフイベント 脱炭素ライフスタイルダイアログ

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キックオフ! 脱炭素ライフスタイルダイアログ

横浜市では、2050年までの脱炭素化「Zero Carbon Yokohama」が目指されています。このたびは、「脱炭素化に資する魅力的なライフスタイルの創出・浸透事業」の3カ年度事業のキックオフイベントとして、横浜市とあいおいニッセイ同和損害保険株式会社の両主催による「脱炭素ライフスタイルダイアログ」が開催されました。
(関内イノベーションイニシアティブ㈱はイベント運営事務局として参画しました。)

 

開催概要

日時:2月14日(火)18:30~20:30
会場:YOXO BOX/オンライン参加

プログラム:
 1.主催者挨拶
 2.本事業の紹介
 3.今後の取組について
 4.基調講演
 5.トークセッション
 6.今後の案内
 

 

主催者挨拶と本事業の紹介

横浜市温暖化対策統括本部企画調整部担当部長
高橋 一彰 氏

 
高橋氏からは、本事業について紹介され、横浜市が目指す2030年度の数値目標(2013年度比50%減)のためには、排出量削減状況が横ばいとなっている家庭部門のライフスタイルの変容に着目していると説明がありました。

 

今後の取組みについて

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 専務執行役員 戸田 成俊 氏

 
戸田氏からは、近年の自然災害等の被害額増加を憂慮し、災害が起きたら保険金を支払うという従来のありようから、防災・減災に大きく舵を切っていること、そのための事業やシステム開発に取り組んでいるとの説明がありました。

 

基調講演『脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動』

環境省地球環境局地球温暖化対策課脱炭素ライフスタイル推進室
室長 井上 雄祐 氏


 
「第二回生活者の脱炭素意識&アクション調査(博報堂)」~2022 年3 月調査結果~では、多くの人々が“脱炭素カーボンニュートラル”という言葉は知ってはいるが、そのために何をすべきかまでは解っていないという結果が示されています。
私たちは何をすべきか。とくにCO2の排出に関しては家庭部門の比重が大きく、行動変容は待ったなしの状況下ではあるものの、CO2削減のためにライフスタイルを変えましょうと言われても困ってしまうのが正直なところです。
そこで、“CO2を減らす”のではなく、“暮らしをよくする”ことで、結果的に”CO2を減らす”ことができれば良いという考え方に立ち、いずれはそれを日本発の新しいライフスタイルとして全世界に提案できるようにしたいという国としての考えを伺いました。

 

トークセッション~脱炭素ライフスタイルの現在地~

株式会社シグマクシス・ホールディングス取締役
株式会社シグマクシス・インベストメント代表取締役社長
柴沼 俊一 氏

 
『歩きたくなる街を創る』と題して、規模の違った2つの街創り支援の事例をご紹介いただきました。発表ではまず、パリ市の事例をもとに、車が街の中心を通るのではなく、車なしでも仕事や生活が徒歩圏内に完結する暮らし、人が自由に歩き出会う街こそがこれからの社会が目指す形ではないか?という構想を示していただきました。街の在り方が変われば、より小さいサイズで、自律分散したコンパクトな公共インフラやシステムによるレジリエントな街創りが期待できます。柴沼氏の活動の背景には、「歩きたくなる街創りと次世代型の社会インフラの充実は、結果的にCO2排出削減に多大な貢献をするが、そこに向けて個人のライフスタイルの変容を促すことが可能か?」という問いかけが常にあるとご説明いただきました。

株式会社スタジオゲンクマガイ
代表取締役 熊谷 玄 氏

 
熊谷氏が携わった『左近山団地パークプロジェクト』では、“人間は理ではないものでつながる”“表現するという行為がコミュニティのキーになる” という考えに基づき、散歩フェスや部活動を提案することで、徐々に地域住民が主体的に活動に関わるようになっていったそうです。
 地域住民が活動的なコミュニティは、誰もが住みやすい、魅力的な地域といえます。一方で、脱炭素ライフスタイルについて自身の取組の経験に引き付けて考えると、 “住居・移動・食・消費財・レジャー”の観点は、地域醸成に不可欠な要素であり、「コミュニティは、街を面白がって行動する1%の人が残りの人を巻き込み、形成されていく。脱炭素ライフスタイルも、1%の人が面白がってくれれば、全体へと波及していくのでは?」と提言していただきました。

柴沼氏と熊谷氏からの発表後、井上氏もコメンテーターとして加わって、トークセッションが行われました。トークセッションでは、脱炭素ライフスタイル実現化に向けてコミュニティが果たす役割や、地域活性化のため工夫した点といった切り口で両氏の意見等が交わされ、最後に、登壇者のみなさまからコメントをいただきました。

井上氏
「ライフスタイルは大きな転換期を迎えています。個人が暮らしを考えることで、地域が、街が、国が変わっていく。今を変容のチャンスと捉え、次のステップにつなげていく。そのために国も支援体制を整えていきます。」

柴沼氏
「異質なひとたちが互いに尊重しあうことで、ビジネスも発展する、というよい相関が創られていきます。今後は、互いが補い合う“範囲の経済”の考え方によって、総合的に費用や手間を減らしていくことで、ハッピーな世界が実現できます。グローバリゼーションの崩壊を念頭に置きながら、今後約20年で社会インフラは地域内で創る体制にしていく必要があるでしょう。」
 
熊谷氏
「実は、今回の登壇が決まるまで、“脱炭素ライフスタイル”を特に意識することはありませんでした。しかし、脱炭素できる個人の取組み57の項目を見てみたら、殆どが自分の活動と重なっていました。コミュニティづくりには、まず場所を提供し、そこに多様な考え方をもつ人々が集まることが成功の方法なのですが、取組みのために新しいテクノロジーやサービスを展開するとき、それがどんなに素晴らしいものでも、同じトーンで全員に投げても広がらなくて、ひとりの熱い思いの人から周囲に伝播することもあります。多様性のあるコミュニティはしなやかに変容し、皆が暮らしやすい場所になっていくのだと思います。自分の活動が自然に脱炭素ライフスタイルにつながっているという、驚きも感じました。」

 

今後のご案内

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
横浜支店地域戦略室長
安藤 憲嗣 氏

 
安藤氏から、横浜市で展開する あいおいニッセイ同和損害保険の「移動」と「食」に関わる実証実験について案内がありました。

 

キックオフイベントを終えて

登壇されたお三方、それぞれの立場からのお話の根底には通じるものが感じられました。それは個人が我慢や無理をしてCO2排出削減に取り組むのではなく、それぞれの地域に根差し、人と人とが交わる暮らしを送ることで、結果的に脱炭素ライフスタイルは実現する、ということでした。
井上氏の基調講演の説明にもあるように、CO2排出削減のためにライフスタイルを変えるということに対しては戸惑いもあります。しかし、地域に小さな楽しみを見つける、顔見知りが増える、行動したくなる、という循環が結果的にCO2排出削減につながるとしたらどうでしょうか?
2050年までの脱炭素化「Zero Carbon Yokohama」は一人一人の行動で出来上がります。
何をしたらいいのかを考える際には、ぜひ、地域の暮らしに想いを馳せ、小さく変えることから始めてみましょう。そして、横浜スタイルを世界に向けて発信していきましょう。