横浜のシェアオフィス・コワーキングスペース、mass×mass 関内フューチャーセンターで行われている「まちなか社食」。「大企業じゃなくても、社食のような機能を“街”で持ってみよう。」をコンセプトに2013年に始まりました。
平日の11:30~14:00のあいだ、横浜の野菜を使ったこだわり弁当がワンコインで食べられる「まちなか社食」は、地元の農家さんやレストラン、近隣で働く人々の顔が見える地域の食堂を目指しています。
その中にある「Challenge Shop」は街で実店舗をはじめる前の「チャレンジの場」となっています。そこでお店を出している方に、どのような思いで参加しているのか。ソーシャルビジネススタートアップ講座2015年卒業生のウィルソンがインタビューしました。
マスマスでおいしい&ヘルシーなお弁当を「まちなか社食」で
「大企業じゃなくても、社食のような機能を“街”で持ってみよう。」
そんなコンセプトではじまったmass×massのまちなか社食。mass×mass入居者以外の方も、平日11:30〜14:00まで利用することができます。神奈川の水源地・山北町の間伐材をつかってできたワゴンで元気よく販売!お弁当には必ず1品、横浜野菜をつかったお惣菜がはいっています。お魚やお肉、日替わり弁当まで、種類もたくさんあるので、ぜひお気軽にお越しください!
Facebookページあります!:https://www.facebook.com/machinakashashoku.in.massmass/
コーヒーがとにかく好き!コーヒーとの出会い
今回お話を伺ったのは「aldo coffee」を運営する石川徹さんです。インタビューさせていただいた日は、横浜でも記録的な大雪の日。石川さんの淹れてくださった温かいコーヒーを飲みながらお話を伺いました。
コーヒー豆や焙煎について詳しく教えてくれる石川さんの「おすすめの1杯」を飲むと、今まで知らなかったコーヒーの味に出会えると人気です。
石川さんはコーヒーのどんなところに魅力を感じているのか、「Challenge Shop」での経験からどんな気づきを得ているのか。お話を伺ってみると、コーヒー豆へのこだわりだけでなく、お客さんとのコミュニケーションを大事にされていることが伝わってきました!
まちなか社食を利用したことのある方はもちろん、お昼のマスマスを知らない方、チャレンジショップに興味のある方、これからお店を始めたい方など、ぜひご覧ください!
ーー いつ頃からコーヒーがお好きなんですか?
石川 徹さん(以下、石川) 僕が中学生だった頃、第一次喫茶店ブームでチェーンの喫茶店が地元の愛媛県にも来たんですよ。グアテマラ、コロンビア、キリマンジャロ、ブルーマウンテン、という分け方をして出すような。それまでは喫茶店って言っても、インスタント出すようなところしかなかったから衝撃でしたね。
ーー 本物のコーヒーを飲める喫茶店が来た!と。
石川 これはなんかおしゃれだぞって中学生にもわかったんですね。父もコーヒーが好きだったので連れて行ってもらったんです。それで「これはうまい!」って思って、そこで豆を買って自分で挽き始めました。父に頼んでサイフォンも買ってもらいましたね。
ーー 中学生ですでに豆を挽いていたんですか!
石川 親にサイフォンを買ってもらったときの条件は「両親が飲みたいと言ったら、かならず淹れる」。それをしっかりと守って、家族が飲みたいと言ったら毎回コーヒーを淹れていました。
ーー 当時からずっとコーヒーの仕事がしたかったんですか?
石川 いやいや、飲むのは好きだったけど仕事にするっていう考えはなかったですね。大学生で東京に出てきたときはバンド一筋のロック野郎。でもドラムがなかなか見つからなくて、何か他のことやるかなって探していたときにふらっと写真展を見に行ったんです。そのとき「これならオレにでもできる」って思ってカメラを買って始めました。
ライブハウスで撮影したり、知り合いのアーティストを撮ったりしているうちに、ジャケットに使わせてくれって言われて、そういう話が増えていってだんだんと仕事が来るようになりましたね。
カメラマンと焙煎士。2つの仕事に通ずるもの
ーー それじゃあカメラマンから、コーヒーのお仕事にするようになったのは?
石川 40代くらいから「いつか小さいジャズ喫茶でもやりたいな」と思うようになって、少し本格的に勉強し始めました。それまで焙煎はやっていなかったんだけど、いつも焙煎をお願いしていた焙煎屋さんがなくなっちゃったんですよ。いろんなところの豆を飲んでみたんだけどおいしくなくて。これはしょうがないから自分でやるかって焙煎も始めました。
ーー でも「じゃあやるか」ってどうやって…?
石川 片っ端から豆を買ってきて、自分で煎って飲んでみて。この豆は何分煎ると酸味が出るとかメモしながら覚えていきましたね。そうしたら、そのうち近所の人が聞きつけて、ちょっとちょうだいっていうのが始まるじゃないですか。それで「おいしいね。もらってばっかりじゃ悪いから注文させてよ」って、この商売がなし崩しに始まっちゃいました。
ーー なし崩しに!
石川 最初は焙煎豆を売るつもりなんてなくて、自分の喫茶店でいつか出せればと思ってやっていたんですけどね。だんだんとそういう注文が来て、じゃあ売ってみるかって。
ーー あれ、なんだかカメラマンになられたときと同じような…。
石川 そうですね。そのままの流れでネットショップをオープンしたのが4年前です。
ーー 焙煎の作業って大変ですか?
石川 最初は機械も買えないから、ずっと銀杏煎りを手振りでだいたい14分から、深煎りだと20分ほど振り続けてました。ひたすら豆を買って飲んでみて、ああでもないこうでもないって試して研究して。何度で何分煎ったか、その結果どういう味になったか、全部メモするっていう作業を7年間。
ーー 気が遠くなる…。
石川 そう、気が遠くなるんだけど、それをやらないといいものはできないから。実は、その作業ってカメラマンをやっていたときの現像の作業とそっくりなんです。写真も現像液につけて、温度や時間を測りながらデータを出すんですよ。それも自分の撮った写真によって時間を変えたり調節するんですね。温度、時間、化学変化を考えながらやるところがまったく一緒。自分で焙煎し始めたときに「これ現像でやってたことと同じだ」と気づきました。
ーー カメラマンと焙煎士。
石川 全然関係ないような気がするけど、どちらも派手なところばっかりじゃなくて、裏方や準備の方が大変なんですよね。カメラマンが撮る時間なんて本当にちょっとで、あとは見えない作業が多い。コーヒーも淹れる時間なんて3分で終わっちゃいますけど、焙煎する時間はもっとかかりますからね。
ーー そう思うとコーヒーを飲むときに意識が変わりますね。
行き交う人々が一息つく場所に
ーー 実際「Challenge shop」でコーヒー屋さんをやってみて、どうですか?
石川 こわいですよ。豆の選定から焙煎、淹れるところまで全部僕がやっているから。見ず知らずのお客さんに、自分のコーヒーを出すのって本当にこわいことなんだと思いましたね。そしてその分、うまいって言ってもらえるとすごく嬉しい。それがまず、すごく勉強になりました。
ーー ネットショップでは、実際の反応が見られないですもんね。
石川 そうなんです。ネットショップと違って実際にお店を持つと、お客さんと顔が見える関係になります。自分がaldo coffeeを通して、お客さんとどういう関係性を保っていきたいかを考える機会になっているのも、ありがたいですね。
ーー aldo coffeeをどんなお店にしたいか見えてきたものはありますか?
石川 aldo coffeeだけではなく、このまちなか社食全体が「人間交差点」になったらいいなと思っているんですよ。
ーー 「人間交差点」?
石川 この場所は、コワーキングスペースというのもあって、一定の会社の人だけじゃなくて、個人で仕事をしている人や地元の人が行き交っていますよね。そういう人たちがサッと通り過ぎていくんだけど、ふとした瞬間に立ち止まってコミュニケーションが生まれて、気が向けばまた戻ってくる。そんな、いろんな人間の交差点になれたらいいのかなと思いますね。
ーー そういう意味では、普通に喫茶店をやっているだけでは出会えない人たちが多そうですね。
石川 普通にお店やってたらコーヒー飲みに来る人しか来ないけど、ここは全く関係ない人も通り過ぎていったりしますからね。うちのお客さんじゃない人も。特殊だけど、おもしろい環境だなと思いますね。
ーー ここに来れば、オススメのコーヒーと焙煎の話が聞ける。そんな交差点だったら、また寄りたくなります。石川さんのコーヒー、また飲みにきますね!ありがとうございました!
ホームページ:http://aldocoffee.shop-pro.jp/
ブログ:https://aldocoffee.tumblr.com/
Facebookページ:https://www.facebook.com/aldocoffeestyle/
◆プロフィール
1990年東京都生まれ。学生時代に国際協力を専攻し、児童労働撤廃を掲げるNPO法人での啓発担当インターンとしてワークショップなどを担当。アメリカ留学、インド一人旅などを経験したのち就職。mass×massのソーシャルビジネススタートアップ講座を通して「買う人が、もっと作る人に思いを寄せる世の中にしたい」と考え、野菜販売を経験したのちライターとなる。「物の向こうにいる人を伝える」ため、主に作り手にインタビューをして発信している。伝統工芸や刺繍、着物と食に夢中。
ito:http://ito-mono.com/
(写真/編集:ほりごめ ひろゆき)