2019年、mass×mass関内フューチャーセンターの運営体制がかわります。
さまざまな環境、時代の変化を鑑みて、クリエイティブディレクターとして関わっていた森川正信がシェアオフィススペース・シェアオフィスの運営責任者を務めることになりました。そして、これまでmass×massを引っ張ってきた治田友香は、起業支援を軸にしたまちづくり事業に専念します。
これまで以上に、関内イノベーションイニシアティブ(以下、Kii)として、地域起業支援やベンチャー企業への資金的支援をよりスピード感をもって進められる体制をつくります。
2019年で8周年を迎えるmass×massについて、これまでの軌跡をふたりが振り返りました。
組織の支援と個人の支援
地域に必要とされている起業支援のあり方
森川 正信(以下、森川) 新体制になってから1ヶ月が経ちましたね。mass×massに入居する方、縁あって訪れてくれた方に対して、どんな体験や価値を作れるか考えると今後が楽しみです。
この1ヶ月はスタッフとコミュニケーションを多くとり、改善できるところのアイデア出しをしていました。
治田さんは、このこれまでを振り返ってみていかがですか?
治田 友香(以下、治田) そうですね。私はこれからさらにまちづくり事業を加速させていきたいと思います。
昨年を振り返ってみると、とにかく駆け抜けた1年だったと感じています。とくに11月に初開催したソーシャルネクストは100名を超える方々に集まっていただき、いま、ソーシャルビジネスに注目が集まっているのを改めて実感できました。
森川 各ラウンドテーブルも盛り上がっていましたよね。Kiiはこの分野での起業支援を継続して行なったきましたが、これまでどんな変化がありました?
治田 私自身、20年前からNPOの支援をしています。主な相談は、すでに活動する仲間と社会課題にどう取り組んでいこうか、組織基盤をつくるにはどうすればいいか、というものでした。一方で、これから起業したいという個人へのサポートは少しそれとは違います。
ヒヤリングをしていると個人の疑問や怒りが根っこにあったり。震災後は新しい働き方の手段として起業を選ぶ人が多くなりました。
森川 組織と個人の支援では、それぞれフェーズも違いますね。それでも一貫してソーシャルビジネスを目指している人たちを支援してきてますよね。
治田 2014年からスタートした「ソーシャルビジネス・スタートアップ講座」は修了生が250名を超えました。大きな特徴は一流企業に勤めているサラリーマンから主婦、学生、リタイアした方まで受講しているということ。年齢も19歳から88歳までと幅が広い。
ソーシャルビジネス・スタートアップ講座の様子。受講生40名以上が集まり、全13コマの講義&ワークを進めていく。
森川 この講座は創業に必要な知識を学ぶだけではなく、仲間ができるところが良いですね。受講生が抱えている課題というのは、1人で考えていてもなかなか前進しない。まずは中央に課題を置いて、いろんな人がこの課題について関わることで前へ進むことができる。
治田 起業家が中心にいるのではなく、課題が中心にあるんですよね。その課題解決のためにどういう組織で取り組めば良いか、活用できる制度はなにか、どんなアプローチが考えられるか。それを議論できるのがまさにフューチャーセンターとしての機能だと。
森川 Kiiは、フューチャーセンターの機能をスクールとして体現して来たと思います。すでに37名がこのスクールから起業しているのもすごいですが、これからは事業を持続させていかなければいけないですね。
治田 このスクールの修了生が起業して事業を続けられる要因のひとつは、地域が見守っているからだと思います。スクールの仲間は立ち上げる前から応援していて、必要であればスキルを生かして支え合ってる関係性も作れている。起業したばかりの時期に相談できる仲間が近くにいるのは心強い。
講座終了後も、それぞれの頑張りが他の受講生への刺激にもなっています。
森川 起業というとIPOを目指したり、企業に売却するというのもある。
そういう意味では、Kiiは地域に必要な起業をサポートしてきたと言えるのかもしれない。
治田 横浜のソーシャル界隈に限っていえば、1~2名を雇用する規模の起業が増えています。個人の自己実現というよりは、地域課題と自己の社会参加を掛け合わせた起業が求められていて。 そこに関心がある人たちが私たちのスクールに参加してくれているように感じます。起業すると時間の使い方がこれまでと大きく変わってきます。人生100年時代と言われる中で、起業という選択肢が新しい可能性を感じている人も増えているのかもしれません。
スクールには、実際に課題を抱えている当事者から大企業のサラリーマンまで参加しています。地域には多様な人が集まっていることを擬似的に体験できるのもスクールの良さですね。
新しい価値を見出していく安心安全なコミュニティ
治田 組織のステージアップ、モデルチェンジの支援もしてきていて。「ボランタリーエースプログラム」「イノベーションスクラム」では、自走していける基盤づくりとして中長期計画をつくる支援をしてきました。
これまでの活動の棚卸しをして、未来と市場を考える。ソーシャルビジネスは市場の捉え方が難しい。お金だけでは回っていないところもあるので、うまく捉えられると推進する力がつきます。
森川 ビジネスの視点では、市場をどう捉えるか、新しい市場を見出せるかが大事ですよね。
治田 あとは、コミュニティ。市場での活動を支えるコミュニティをどうデザインするか。ソーシャルビジネスは両方考える必要があると感じています。
森川 コミュニティを持つことは、今後ますます重要になってきますよね。
コワーキングスペースやシェアオフィスはそれだけだと、ただの働く場でしかなく、利用する人たちの成長には寄与できません。
mass×massは新しい価値を見出し、つくり、発信していく状況を作っていきたいと思っていて。
2015年にホームページをリニューアルしたときに、ある程度プロジェクトの可視化ができた気がするんですよね。
治田 取り組んでいるプロジェクトを見せていく、というのは大事でしたね。
コワーキングスペースにはスクールの修了生も入居していて、なかで新しい繋がりをつくって、次のステップへチャレンジしている。
私はこの7年で安心安全なコミュニティが作れたと感じていて、こういう新しい繋がりが生まれるのも信頼関係があるからこそできることですよね。
森川 グッドノイズが生まれてきてますね。
治田 入居者さんもそういうmass×massの文化や雰囲気を感じ取ってくれている。そして、そこにマスマスカフェのような定期的なイベントをやることで、新しい価値観の人とも触れられるので、いい感じに刺激もある。
森川 マスマスカフェも丁寧に設計していて、ゲストはこのコミュニティに新しい刺激を入れてくれるような面白いチャレンジやアクションをしている方をお呼びしています。そして毎回必ずイベントの様子を写真で公開しています。だからこそ、違う価値観のひとは自ずと入ってきづらくなっている。
今あるコミュニティとの組み合わせで新しい価値を見出しつつ、それを発信していく。これは続けたいですね。
さまざまな経験値がシェアできる
私たちが目指したいコミュニティのあり方
治田 mass×massが誕生した7年前に森川さんがつくったあのポスター、すごく良かったよね。
当時考えていたことが、いままさに現実になっている。
森川 そうですね。ようやく形になってきましたが、こうやって場を作っていくには、いろんなプロセスがありましたね。
治田 そもそもコワーキングスペースはなにをもって成功といえるんだろう?
森川 利用者の満足度でしょうね。
ただ、それぞれ利用する人によって期待しているポイントは違っています。
だからこそ、運営している僕たちが大事にしたい軸が何かを発信していくことで、いいコミュニティが作れるんじゃないかと思ってます。
ここのコミュニティの満足度を定義して、そこを深掘ってみる。
治田 そうですね。どんな人たちに入って欲しいか、という視点は大事ですよね。
森川 もちろん面白いお仕事やプロジェクトをしている人たち、面白いことをしたいという人たちに入って欲しいです。
ワクワクする仕事や、地域を面白くすることにモチベーションがあるといいですよね。
そのためにもコミュニティの可視化をしていきます。
どういう人たちがどういうことを考えているのか見えると連携が生まれやすい。
治田 そうですね。いいシナジーが生まれそうな人に入って欲しいですよね。
森川 昨年からはじめたコワーキングスクールキャンプでは、横浜と福岡の二拠点で地域をより魅力的にするコワーキングスペースのつくり方についてスクールを開講しました。そこでの成功事例から共通項が見い出してそのあたりも言語化していきたいですね。
治田 そうですね。ここにいることの価値をさらに大きくしていきたいですね。
近年、強く感じていることは、まちづくりの大事な要素に起業促進が注目されているということ。事業を立ち上げから継続させていくためのサポートするノウハウや場も各地域で重要性が高まっています。
どの分野も同じだけれど、とくにソーシャルビジネスや地域での起業は儲かりにくい。
だからこそ、福祉やものづくり、他の分野と掛け合わせることで、新しい市場を開拓する、その道筋を描けるといいですよね。
そしてスケールしていくには、資金、情報、ひとが大事。
森川 地域に必要なビジネスの最大化ですね。
そのためには、ノウハウが共有できる環境づくりが必要ですね。成功事例だけではなく、失敗した事例も共有されて、さまざまな経験値がシェアされるコミュニティがつくれたら、より横浜が面白くなる気がしています。
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二人の対談はここまで。
Kiiは、さらにパワーアップして、横浜だけでなく様々な地域で、暮らし働く人たちがワクワクするようなプロジェクトを行なっていきます。そして、mass×massはローカルを軸にしたコワーキング・シェアオフィスだからこそ、横浜の地域企業の皆さんと価値観の近しい仲間同士でチームをつくり、地域や社会に新しい価値を提供できるプロジェクトを生み出していきたいと思います。
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text/photo hiroyuki horigome