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イベントレポート|起業家の可能性をさらに高める多様なサポートプログラムの本質とは?藤村隆さん、イ・スヨンさんが「伴走支援」のあり方を語る。

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ソーシャルネクスト、ラウンドテーブル4のテーマはソーシャルビジネスの資金的支援のしくみとそのインパクト。横浜でもここ数年、様々なニーズに応えるように、ソーシャルビジネス分野での起業が増えています。そんな中、事業者をサポートするために、多様な資金的支援の仕組みの必要性が高まってきています。
一方で、単なる資金のサポートだけではなく、事業者の可能性をさらに高める多様な手段を用意している団体の取り組みにも注目が集まっています。
 
2人のゲストから事例をご紹介いただき、ソーシャルビジネス事業者への伴走支援のあり方、資金的支援の手法について迫りました。豊富な事例をもつゲストと一緒に、横浜での資金的支援のあり方、事業者の可能性を広げるサポートの手法について伺いました。
 
ゲストはNPO法人ソーシャルベンチャーパートナーズ東京(以下、SVP東京とする。)代表理事の藤村隆さん、財団法人美しい財団希望の店のSuyeon Lee(イ・スヨン)さん、通訳に桔川純子さん、進行は弊社代表の治田友香が務めました。

 
 

自分たちのお金を自分たちらしく、社会に良いインパクトを与えたい

 

藤村隆さん
大学院在籍時にASEEDJAPANでにてNPOバンクの全国ネットワークの支援、立ち上げに関わる。日本IBM入社後、ソリューションセールス
として大手金融機関様を担当。並行して2011年からSVP東京にパートナーとして参加し、NPO法人難民支援協会の協働チームでにてリード
パートナーを務める。2012年日本IBMプロボノプロジェクトでにてTeach For Japanを支援。その後、SVP東京に事業統括として参画。
2017年6月からよりSVP東京代表理事。難民起業サポートファンド理事。ETIC.社会起業塾 外部コーディネーターも務める。 
◎NPO法人SVP東京

 
SVP東京は、設立15年目を迎える団体で、事例はとても特殊なケースが多いんだそう。ミッションは、「社会的な課題解決に取り組む革新的な事業に対して、資金の提供と、パートナーによる経営支援を行うことにより、ともに社会課題の解決をめざす」としています。
 
 
「私が大学生の時に出会ったのがNPOバンクという取り組みでした。そこで元銀行員が関わっているところを見て、ビジネススキルがソーシャル分野に及ぼす影響は大きいと感じた経験があります。その後、難民支援協会というNPOにも関わり、生活が安定しにくく、長く勤めるのが難しいがゆえに、家族でレストランなどを起業する人たちに出会い、そういった人たちの起業支援にも携わりました。そこで感じた自分の価値観がひっくり返るような感覚を今でも覚えています。」
 
 
SVPはシアトルで誕生し、現在は世界40都市にあります。自分たちのお金を自分たちらしく、社会に良いインパクトを与えたいと設立され、お金だけでなく、経営の支援もしています。
SVP東京には現在140名のパートナーがおり、各人が年間10万円を支払ったうえで事業に参画しています。パートナーは年間100時間、月8時間の関わりを持つことになり、30代前半が中心。今年度は9つの団体を支援しているそうです。また、これまで50の団体と協働していて、支援機関が終わっても協働が続いている例もあるそうです。
 
 

ただお金を貸すだけではない。小さくても強い企業をつくるための多様な支援プログラム

 

Position: 2012~ Beautiful Foundation, Corporate related team - Hope Store assistant Manager
Attainments in scholarship : 2012. Graduated from Dongduk women’s university degree in Social welfare 
2017~ master's course, Cultural anthropology, yonsei university
◎The beautiful fund

 
美しい財団は、2000年にアメリカのコミュニティ財団をモデルに立ち上がった韓国初の市民公益財団法人です。
希望の店プロジェクトは美しい財団の様々ある事業の一つ。イ・スヨンさんからは、経済的に困難なシングルマザーが創業する際に400万円を1%の利子で貸し出しというマイクロクレジットについてご紹介いただきました。
 
希望の店の第1号店は、2004年7月、三人の女性が共同でチゲのお店でした。そして2010年に300店舗が創業、2018年では360店舗を数えます。
なぜこの事業が必要なのか。韓国ではシングルマザーが増加していて、5組に1組の割合になっています。経済的に困難な場合が多く、子育てと仕事の両立が難しい、そして適切な仕事場が少ない。創業しようとしても借入れが難しいのが現状です。政府や行政の支援も脆弱であり、経済的な自立を助けるという活動はされていないそうです。
 
借りたお金は約8年で返済する。そしてまた別の方へ支援していくという流れ。融資申請→選定→創業支援。加えて、創業支援を受けながら、創業し、多様な支援を得て、自立を促します。創業した会社の平均的な生存率は25%ですが、希望の店では70%と高い水準にあります。起業によって安定した住居を手に入れられるというのも成果の一つとして挙げられる。多くのシングルマザーがこどもの教育費にお金がかけられるようになりたいと望んでいるそうです。
 
 
「このプロジェクトは10周年を迎え、70件の支援実績を積んできた。ただお金を貸すだけではなく、小さいけれど強い企業をつくるために多様な支援プログラムを用意している。ソウルだけでなく、さまざまな地域の協力団体と活動している。」
 
 

支援する、されるの関係から、チームとして取り組む伴走支援のあり方

 
ここからは進行の治田からゲストのおふたりへ質問を投げかけるようにクロストークが展開されていきます。
 

 
治田  先ほどのマイクロクレジットの原資はどこが出しているんですか。
 
イ・スヨンさん  アモーレパシフィックという化粧品会社です。創業者の母親がシングルマザーであり、創業50周年を機に、このプロジェクトが立ち上がりました。
 
治田  日本ではシングルマザーを対象にした資金的支援をしている事例が少ないのが現状です。財団のなかでやっているのも珍しいですよね。経営コンサルティングというのは具体的にどのようなことをされていますか。
 
イ・スヨンさん  飲食店だけではないので、多様な専門家がサポートしてくれる。士業やマーケティングなど。実際に創業してみて、こういうところでサポートが欲しいという要望を受けて、その度にサポーターを増やしていきました。
 
治田  サポーターに対する教育の方法や工夫はなにかありますか。
 
イ・スヨンさん  事業の目的と進め方を伝えて、共感する人にジョインしてもらっています。プロボノではなく、市場価格よりは少ないですが、希望の店がフィーを支払っています。また対話を重ねることで、偏見をなくすようにしている。
 
治田  SVP東京ではプノボノ支援はされていますか?
 
藤村さん  プロボノとはあまり言わないようにしています。目的はあくまで経営の成長。団体が成長に必要としているスキルがなにか、というのを見極めるようにしています。あくまで、専門スキルを発揮してアウトプットすることが目的化しないようにしています。
また、団体を選ぶのに半年間の時間を使っています。なぜなら価値観を合わせて行くことが大事だからです。支援する、されるの関係ではなくてチームとして取り組めるように、「上から目線」にならないようにしています。
 
治田  成功事例や、失敗事例からのリカバリーをどうしたかという事例はありますか。
 
イ・スヨンさん  何をもって成功とするかが大事ですね。売り上げが伸びているか、長い間事業を続けているかなど。たとえば、エステを開業し返済も済んで、現在は後輩へメンターとしてスキルの継承をしているという事例もあります。
 
藤村さん  単に売り上げが伸びたか、ではないですね。事業の基盤づくり、信頼される組織づくり、寄付を安定的に集められる団体づくりという視点が大事です。卒業した後に伸びている団体もいくつもある。失敗の定義は難しいが、協働が成り立たなくなってしまうケースはあります。互いのニーズが合わなかったり、信頼関係が築けなかったケースもありました。成功の設定が難しいのが、この分野の特徴だと感じています。
 
 

 

 
 
最後にゲストのおふたりに今後の展望を伺いました。
藤村さん  10年前はソーシャルセクターでは資金調達の環境は厳しかったが、あと3年くらいで解消されるのではと思います。ただ事業者の力量がまだ弱いのも事実。ソーシャルベンチャーが順調に資金を回していくのに5~10年かかるため、そこに資金をどんどん投入するのは、健全でないケースもあります。伴走者を支えるしくみもつくりつつ、みんなでサポートしていく体制づくりをしていきたいです。
 
イ・スヨンさん  社会的企業に取り組む、関わる人と出会えて嬉しいです。社会的にも価値を出しながら、活動を続けるために利益を生み出すことが大事。1件でも成功する事例が増えて、たくさんの価値を共有できるようになると良いと思います。
 
 

最後に

 
ラウンドテーブル終了後、会場移動していた皆さんも最初の会場に戻ってきて、4つのラウンドテーブルでどんなトークが展開されたのかを各ファシリテーターが発表する振り返りの時間がありました。
 

 

 

 

 
どのラウンドテーブルも熱のこもった議論が行われ、次につながるアクションが見えてきたようです。
 
共通して話されていたことは、社会課題を解決することを目的としたビジネスとはいえ、「事業が魅力的か」「社会に対して価値を提供できているか」が大事だということ。今後は、この分野で活躍しているひとたちが横でつながることで、よりクリエイティブな価値を生み出していくことができると良いと感じました。
 
 
ご参加いただいた皆さま、ご登壇いただいたゲストの方々、運営サポートしてくれた皆さん、本当にありがとうございました!!

 
 
 
各ラウンドテーブルのレポートも随時公開していきますので、お楽しみに!!
▼基調講演&市内事例のレポートはこちら!
▼ラウンドテーブル①のレポートはこちら!
▼ラウンドテーブル②のレポートはこちら!
▼ラウンドテーブル③のレポートはこちら!

 
 
Photo : yuji tanno
text : yuka haruta
edit : hiroyuki horigome

 
 

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