田園都市で暮らす、働くプロジェクトとは
持続可能な郊外住宅地のためには、地域で新しい働き方が生まれ、充実したライフスタイルを送れることが大切と考えます。さまざまなプログラムを通じて、田園都市沿線での豊かで新しい暮らし方・働き方を創出するプロジェクトです。
▶︎次世代郊外まちづくりの活動の一環です。
地域で活躍、活動している場・人を訪ね歩く、あおば拠点歩き。第二回目の今回は藤が丘エリアを巡りました。
参加者は定員を超える約20名!それぞれの拠点を埋めつくす形となりました。
案内人は、前回に引き続き、NPO法人森ノオト代表 北原まどかさんに務めていただきました。
当日の様子をレポートでお届けします!
▼INDEX
・野菜を人をよみがえらせたいという思いから生まれた「Revive-Recipe TENZO(リバイブレシピ・テンゾ)」
・利用者は約250人にのぼる日も。全世代に愛される拠点「ユートピア青葉・もえぎ野地域ケアプラザ」
・運営するのは大変、でもお金には代えられない楽しみがある。「カフェ・ギャラリー リンデン」
・飲食店という広い間口からコミュニティを広げる「2bananeira.(ドイス バナネイラ)」
・最後に
野菜を人をよみがえらせたいという思いから生まれた
「Revive-Recipe TENZO(リバイブレシピ・テンゾ)」
「Revive-Recipe TENZO(以下、テンゾ)」は、藤が丘駅から徒歩約2分のお惣菜屋さんです。
店名の一部である「Revive(リバイヴ)」という言葉は、「人や物をよみがえらせる」という意味。社長の植木さんがテンゾの姉妹店であるレストランを運営している時に、廃棄処分をされている野菜の存在を知ったことがお店の由来につながりました。
近隣の農家さんが作った採れたてのトマトを食べて、その鮮度や香り、旨味に感動した植木さん。その一方で、育てた野菜のうち4割が、形が悪くて市場に出せない、人手不足で収穫が出来ないなどの理由で、廃棄処分をされていることを知ったのです。
近隣の農家さんが作る野菜で料理を作りたい。「廃棄される野菜を『よみがえらせたい』」、そんな想いで始められたのが、このテンゾでした。
「よみがえらせた」のは野菜だけではありません。地域の人たちの経験や知識を生かしたいという想いから、スタッフは元パティシエの方や地元の主婦の方などが中心。
お店の定休日を使ったケーキ作りや日本体育大学の学生さん向けのスポーツ栄養学に基づいたお弁当の提供など様々な活動を展開し、培ったスキルや経験を生かしています。
利用者は約250人にのぼる日も。全世代に愛される拠点
「ユートピア青葉・もえぎ野地域ケアプラザ」
「横浜市もえぎ野地域ケアプラザ(以下、もえぎ野地域ケアプラザ)」と「老人福祉センター 横浜市ユートピア青葉 (以下、ユートピア青葉)」は隣接した施設です。
もえぎ野地域ケアプラザは、機能回復室、作業室、和室などバラエティ豊かな部屋があり様々な団体が長期で安定して活動しているというのが特徴。
一方のユートピア青葉は、なんと一日に200人~250人ほどが出入りをし、赤ちゃんから高齢者まで幅広い世代の方々に利用されている場所です。驚くことに、社交的な女性に比べ男性の利用率が通常は低いことが多いところ、ユートピア青葉では男性の利用者が多く男女でほぼ1:1の比率だそうです。
看護師として働く鳥井さんは、「おじさまおばさまに要介護にならずにいつまでも元気でいてもらうために何ができるか」を日頃から考えています。
そこで「ケアプラザから遠い場所に住んでいる人たちのためにも何かしたい」と、昨年はみたけ台の老人ホームの体育館で「ハマトレ体操」を行う会を開催。
地域の人々が杖なしで長く元気に歩き続けられるよう、試行錯誤しながらも意欲的に取り組まれている様子が鳥井さんのお話から伺えました。
運営するのは大変、でもお金には代えられない楽しみがある。
「カフェ・ギャラリー リンデン」
「カフェ・ギャラリー リンデン(以下、リンデン)」のオーナー近藤さんは以前ドイツに滞在されていました。
各家庭に必ずと言っていいほどアートが飾られており、訪問して最初の話題はアート、ティータイムで語り合う話題もアート・・・そんなドイツの暮らしとアートの密接さにカルチャーショックを受けたそうです。
その体験から生まれた「いつかそういう場所をつくりたい」という思いをさらに強めたのは、近藤さんが落ち込んでいた時期にある一枚の絵に心を支えられたこと。
「絵のパワーで何かしたい」という強い気持ちから、完璧は目指さずに「とにかく始めちゃって、それから考えよう!となかば勢いでリンデンをオープンした」そうです。
ギャラリーは、定期開催はせずに訪ねてきたアーティストさんと「何か一緒にやりたい」という話になったタイミングで。置いてあるアートは、有名無名関係なく、近藤さんがその人の姿勢がいいな、楽しんでいるなと感じたアーティストのものをチョイス。
「自分がリタイアしたあとに何を楽しんでいくかを考えるのが大事。一生楽しめるものに出会えたらいいと思う。運営するのは大変だけど、お金には代えられない楽しみを見出している」
そんなお店の運営スタイルといただいたメッセージからは、近藤さんが自分のペース、そして自分が好きだと思うことを大事にして歩んでこられた様子が感じられました。
飲食店という広い間口からコミュニティを広げる
「2bananeira.(ドイス バナネイラ)」
「2bananeira.(以下、バナネイラ)」オーナーの加藤さんは、元々12年企業に勤める中で、無農薬栽培の農家さんや生産者さん、自然食品の販売者さんなどと深く関わってきた方です。
その日提供されたランチの野菜は、神奈川県秦野(はだの)市の野菜がメイン。加藤さんは、初めて秦野の野菜に出会ったときにその味の濃さ、野菜そのもののエネルギーに、ものすごい衝撃受けたそうです。
「この野菜を皆に食べてもらいたい」という思いが、飲食店のオープンにつながりました。
ビーガン料理店やその他様々なお店の料理、実際の畑・野菜の様子も体感してきた加藤さん。ビーガン料理はニーズに対してまだ店数も少なく、思想から入る分、調理の引き出しやスパイスの使い方が物足りないと感じました。そのため、バナネイラではイタリアンで修業を重ねた料理人の方にシェフを任せ、味つけや彩りにも拘っています。
また、食だけでは健康になれない、と取り組み始めたのは、お客さんとの毎週月曜朝の太極拳。その他にも、婚活イベントや音楽ライブ、寺家ふるさと村での自然農など、様々なきっかけづくりにより今では色々な軸でお客さんのつながりが広がりました。
「飲食店というのは入りやすい、間口が広いというメリットがある」と加藤さんはいいます。バナネイラは、動物愛護や環境保全に取り組む人や健康志向の人など、多様な人たちが集まって交流をする場に変化してきていました。
最後に
最後は、バナネイラの料理を実際に味わいながら、参加者の方々とランチを楽しみました。
今回の拠点歩きでは、どの拠点でも、自分なりのこだわりを持ちながらも、「この野菜を食べてもらいたい」「絵のパワーで何かしたい」といった「他の誰かの力になりたい」という思いが大きな原動力になっていることを感じました。
参加者の方々からは、「オーナーさんによってやり方も思いも様々で皆同じじゃなくていいんだと納得、自分らしいやり方を探していくヒントになった」「どのようにして地域に根差しているか、ネットにはない情報などを知ることができた」「近くに住んでいても知らなかった魅力的な場所を知ることができて楽しかった」など、直接拠点に訪ねてお話を伺ったからこそ感じた学びや楽しさをお伝えいただきました。
ご協力いただいた各拠点の皆さま、ご参加いただいた方々、案内人を務めていただいたNPO法人森ノオト代表 北原さま、ありがとうございました!
なお、北原さんが編集長をつとめるWEBマガジン「森ノオト」にて、北原さんが執筆されたレポートも公開されていますので、ぜひそちらもご覧くださいませ。
▶人生をリアルに感じられる「あおば拠点歩き」。藤が丘で出会った、しなやかな生き方