田園都市で暮らす、働くプロジェクトとは
持続可能な郊外住宅地のためには、地域で新しい働き方が生まれ、充実したライフスタイルを送れることが大切と考えます。さまざまなプログラムを通じて、田園都市沿線での豊かで新しい暮らし方・働き方を創出するプロジェクトです。
▶︎次世代郊外まちづくりの活動の一環です。
2019年度最後のあおば拠点歩き。訪ね歩いたのは、荏子田・すすき野エリアです。大雨の予報もされた寒い日でしたが、幸い雨にはほとんど降られず、約10名で四つの拠点を訪れ、お話を伺いました。
今回も、NPO法人森ノオト代表 北原まどかさんに案内を務めていただきました。
当日のレポートをお届けします!
・つながらなくても成立してしまうからこそ、はたしてきたつなぐ役割「ガーデン&エクステリアLEADあざみ野」
・大切にするのは『自分がおいしいと思える』『友達に勧められる』こと「TRE FLIP BAGEL&BREADS」
・全世代の人が仲間づくりをできる場所にしたい「すすき野地域ケアプラザ」
・20年かけて実現された、『共有することの豊かさ』「荏子田太陽公園・太陽ローズハウス」
・最後に-全三回の拠点歩きを振り返って-
つながらなくても成立してしまうからこそ、はたしてきたつなぐ役割
「ガーデン&エクステリア LEADあざみ野」
「ガーデン&エクステリア LEADあざみ野」オーナーの安生さんは、青葉区で過ごして数十年。青葉区には二、三代目として、先代からお店を継いで地域に根差している人が多く、イベントや団体活動が活発なまちだと感じています。「住民の入れ替わりが多く人口も多いからではないか」と安生さんは話します。
それはいいことではあるが、「それゆえ横でつながらなくてもそれぞれで独立して成立してしまうという一面がある」と安生さんは言います。
案内人である北原さんに「つなぐ人」と紹介をされた安生さんは、ばらばらに活動をする地域の人々を「つなぐ」役割を果たしてきました。
青葉台からあざみ野への引っ越しを機に、もともと青葉台で一緒に活動していた仲間と引っ越した先のあざみ野が繋がったら面白いと考えたのがそのきっかけ。この3、4年はお互いの地域のイベントを手伝っています。先日も青葉台のマルシェにあざみ野の商店会として出店をしたそうです。
安生さんにとって当初「商店会」のイメージは良くなく、自分の中で線を引いている所もあったそう。参加を後押ししてくれたのは、安生さんいわく「おせっかいのおじさんたちおばさんたち」、親しみをもって呼ぶ、地域の人々でした。何度も声をかけてもらったことで、気軽に参加できるようになり、仲間が増えていったことで、地域活動に精力的に取り組むようになったとのこと。「つなぐ人」である安生さんの現在の活躍の背景には、地域の方々の積極的な声掛けがありました。
紹介で来てくれるお客さんも多く、紹介してくれた人に何かを返したいという思いも、安生さんの原動力です。
大切にするのは『自分がおいしいと思える』『友達に勧められる』こと
「TRE FLIP BAGEL&BREADS(トレフリップ)」
「TRE FLIP BAGEL&BREADS」は、安全・安心を大切に、ベーグルなどを販売しています。
田中さんがお店を初めて3年。「子どもと片時もはなれたくない」という強い思いから、友達も多く馴染みのあり、家族で子育てしやすい土地を選び、子育てと両立しながら営業をしてきました。時には営業中にベビーベッドを置いて営業をしていた時期もあったとのこと。
駅から遠いことはお店として懸念材料でも、一人でやるにはちょうどいい、と判断をしたそうです。
元々、店をもちたいという気持ちがあったわけではなく、「自分の好きなベーグルを売っているお店が近くにない、じゃあ自分で作ろう!」という思い立ちお店を始めたといいます。
ベーグルの作り方を学校などで専門的に学んだことはないそうで、ご自身で追及して今のベーグルを作り上げていったのだといいます。
「自分がおいしいと思えるものを出している」「インテリアや絵本などお店に置いているものは『友達にも使ってもらいたいと思えること』を基準に選んでいる」というお話からは、「自分が良いと思え、心地良く感じられること」を大切にしている姿勢がみえ、それが地域の人からの共感、応援を得ているのだと感じられました。
この日は同じ「田園都市で暮らす、働く」プロジェクトの「小商い講座」の参加者の方も参加されていましたが、田中さんはまさに小商い講座でテーマとしていた「自分の好きなことや特技を活かしたスモールビジネス」を実現されていたように思います。
全世代の人が仲間づくりをできる場所にしたい
「すすき野地域ケアプラザ」
「すすき野地域ケアプラザ」は横浜市の全138箇所の地域プラザのうち136番目に開設された場所。1階部分は鉄筋、2階は木造でできており、ログハウスのような雰囲気があります。
地域の活動を活発にしたいと調理室や広いスペースも用意。昨年開催したクリスマス会には約100人もの子どもたちが参加したそうです。その他にも、ヨガや老人クラブ、お誕生日会など、様々な用途に使われています。
認知症などの病気を抱えても自分たち自身の力で生活していけるようにと、小さいつながりを作ることを多く作ることを大切にしてらっしゃるそうです。横浜ウォーキングポイントの一つとなっていることも、立ち寄ってもらうための一つの工夫。
「困ったときに頼る場所、というだけでなく、仲間づくりをする場所にしたい、そのために赤ちゃんからお年寄りまで使える施設にしたい」とスタッフの皆さんが熱心に取り組まれている様子がみえました。
20年かけて実現された、『共有することの豊かさ』
「荏子田太陽公園・太陽ローズハウス」
「荏子田太陽公園」は、かつて木が鬱蒼と茂り「暗くて危険」と言われていた公園だったといいます。
綺麗にしたい、シニアに出てきてほしい、お子さん連れにも来てほしい。そんな数々の思いから、2001年からバラを埋め始め、今では230本のバラが公園には埋められています。
公園内のバラは年間1,000円で好きな名前をつけたバラを植えられるオーナー制。お孫さんの誕生の際に「名前を付けたバラを植えたいんですが空いてませんか」といったお問い合わせをする方も多いのだそう。
大きな特徴は、ホールやキッチン、トイレを備えた地域住民が交流や活動できる場所、「太陽ローズハウス」。
荏子田には2,000地帯もあるのに集まれる拠点が少ない、と困っている住民の声を聞いていた増田さんは、なんとか実現をしようと、コーティングや外装、クロスなどを自分たちで作業をして費用を浮かせ、ヨコハマ市民まち普請事業という助成金の制度に応募。トップの成績を獲得し、助成金を得ました。
それでも足りない分は寄付金を募り、最終的に集まった金額はなんと合計約570万円でした。
増田さんは「『ここは皆の場所なんだ』と、共有することの豊かさを常に伝え続けた」といいます。「一回では伝わらないから、何回も何回も伝えることが大切」「熱意があれば通ずる」という言葉の通り、増田さんの熱意があっての今の荏子田太陽公園の実現があったということがお話からひしひしと伝わり、
特に起業や新たな活動を始めようとしている参加者の方々にも刺さった内容だったようです。
最後に-全三回の拠点歩きを振り返って-
第三回目の拠点歩きを終えて、「自分自身だけではなし得ないことでも地域の人たちとつながることで出来ると学んだ」「自分の住む街でもなかなか歩く機会がなく違う視点で街を見ることができ新しい発見や学びがあった」といった声を参加者の方からいただきました。
お話の中で「横でつながらなくてもそれぞれで独立して成立する」という表現もあった青葉区ですが、各拠点でのお話の中からは人と人とのつながりを大切にし自らつながりを作ろうとされている多くの人々の存在が垣間見えました。
また、全三回の拠点歩きでは、あおばセカンドキャリア起業セミナー受講生(現在・過去)、小商い講座受講生、くらすBar参加者、など、次世代郊外まちづくり・「田園都市で暮らす、働くプロジェクト」から幅広くご参加いただき、それぞれのコミュニティの方々が交流・意見交換をする機会にもなりました。
また、三回を通して、「近くに住んでいても歩いてみたら新しい発見があって地元をもっと使おうと思った」「こんなに地元にお店があるなんて知らなった。通って応援したい」「表から見て気になっていたけどなかなか入る機会がなかったから良かった」という声を多くいただいたことが印象的でした。
快く視察にご協力いただいた各拠点の皆さま、ご参加いただいた方々、三回にわたる2019年度拠点歩きのイベントの案内人を務めていただいた森ノオト 北原さまに改めてお礼申し上げます。ありがとうございました!
なお、北原さんが編集長をつとめるWEBマガジン「森ノオト」にて、北原さんが執筆されたレポートも公開されていますので、ぜひそちらもご覧くださいませ。
▶荏子田・黒須田・すすき野。「地域起業」はどれだけ「まちのこと」を想えるか。