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苅部さん質問シナリオ|ver.20211202

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Q.苅部農園さんについてお聞かせください。
A 苅部農園は、江戸時代から続く代々農家で私が現在13代目となります。横浜市保土ヶ谷区で年間100品目の露地野菜と果樹を栽培しています。私は、1996年、25歳で就農し、1999年に農園の直売所「FRESCO」をオープンしました。農地は現在2.5ヘクタール、収穫したものをその日のうちに販売できる地産地消を目指した都市農業を実践しています。9割の野菜を自社が運営する直売所「FRESCO」にて販売し、残りの1割を学校給食に提供しています。

Q.現在栽培されている作物(特にオリジナルブランド品種)をなぜ栽培しようと決めたのでしょうか。
A 私が就農した時は主にキャベツを主力に葉菜類や大根などを生産していました。私の父は市場出荷への強いこだわりがあり、優良な作物を作っていました。それでも、市場は大量出荷をする有名産地の農作物を高く評価し、都市部の農家はなかなか実力を認めてもらえない状態でした。神奈川県内で見れば横浜市の農家の出荷量はそれなりに多いのですが、やはり有名産地とは比べものになりません。そうした市場での存在感の薄さ、出荷量が安定しないことなども横浜市の農産物の評価が低い要因だったと思います。
こうした状況で、今後も横浜市の真ん中で農業を続けていく意味があるのか?と疑問を感じていたのです。そんな中、農業には定年がありません。仮に80歳まで仕事を続けていくのであればまだあと50年はあるんですね。それであれば、他の有名産地に負けない、ブランド力のある野菜を作ってみたいなと思ったんです。横浜を代表する、苅部農園を代表する野菜を作ることができれば、次の世代にも残せますよね。時間はあるのだから、チャレンジしようとはじめました。

Q営農.指導事業について教えてください。
A 何か病気が発生した出た時などに、県の農業技術センターに相談をすると対策方法等様々な情報を教えくれます。土壌診断なども定期的に来てくれています。また生産者向けの勉強会などを開催して下さり、そこでは、技術を学ぶだけでなく、他の生産者の方々との出会いもあり、多様なサポート頂いております。

追加質問:(農家を継いだ際に、新規就農者向けの研修等に参加しましたでしょうか?)
(土壌診断や相談サービスは無料ですか?)

また、横浜市の支援は本当に感謝している。都市農業、横浜の農業の魅力を引き出してくれたのが横浜市の農政課だと思っています。
1つは都市部で開催するマルシェなどの企画、そしてそのマルシェに我々のような農家にお声がけを頂いて、出展をすることで地域で(私の)名前が知られるようになり、ひいては直売所にお客様が増えていきます。25年前は、そうったマルシェがなかったので、横浜市がみなとみらいなどの都市部で企画運営をしていただいたことで、良いPRの場になりました。

その他には、「ハマフードコンシェルジュ」などを通じて、農や食に興味のある市民の方々と農家の接点を増やしてくれています。ボランティアや有償で働いてくれる方々との出会いの場となり、本当に助かっています。横浜市が我々農家を飲食店や消費者である市民をつなぐ役割を担ってくれて、本当に助かっています。

JA横浜(が運営する直売所)には、一部の加工品を出荷しています。その他野菜部や青壮年部などの部会の存在が本当に助かっています。生産者同士の繋がりが生まれ、農家で様々な情報を交換しています。助かっていますね。横浜のJAは生産者に主体性を持たせ、生産者がやりたいことを自由にやらせてくれます。

Q苅部農園さんの出荷先を教えてください。
A 9割を自社で場所を開き運営する直売所「FRESCO」にて販売、残りの1割を学校給食に提供しています。

Q.複数の販路をどのように使い分けているのでしょうか。生産者から見たそれぞれのメリット・デメリットなど。
A 現在の苅部農園の販路は前述の通りです。親の世代までは市場に出荷することが当たり前、それ以外の選択肢はほぼありませんでした。私が就農してから25年で本当に多くのことが変化してきました。特に地産地消のムーブメントは、25年前には全くなく野菜は有名産地のものをスーパーで買う、そういったお客様が大半だったと思います。それが、この20年で地元で取れた新鮮な野菜を、その日のうちに食卓で味わう、そういった消費者の価値観に変化してきました。また我々横浜の農家は、これだけ沢山の方々が暮らすエリアだからこそ、消費者が目の前に沢山いる環境であることに気がついたんです。わざわざ市場に出して、他の有名産地と比べられ、買い叩かれる環境に身を置かないで、地元で販売すること。そうすることで、日々お客様からの声を聞きながら、次に植える野菜を考えたり、直接美味しいといってもらえるスタイルが都市農業の醍醐味だと思います。

都市部の農家は、これからは野菜を売るだけではなく顔を売る。そうすることで、あの農家が作るものは安心して食べれる。どんな野菜でもあそこで作られたものなら、美味しい。そんな風に思ってもらえることが良いことだと思います。

Q.レストランへの出荷についてお聞きします。現在取引のあるレストランは何店くらいありますか。
A.  苅部農園の特徴として、飲食店・レストランへの野菜の出荷(配送)はやっていません。それも様々なことからそうした対応にしています。多くの飲食店さんから卸の相談を受けるのですが、出荷をするとなると野菜を洗ったり、袋詰めしたり、様々な仕事が増えることになります。以前は市場に出荷するために、片道30分、往復で1時間、合わせて袋詰めなどの出荷作業で2時間。毎日日が暮れてからの作業が多かったのです。本当にそれが必要なのか?そういった時間を野菜作りや家族の時間に当てることで、より健康的に美味しい野菜を育てることができると思い、市場や飲食店に卸すのをやめました。扱いたい飲食店さんがいれば、直売所まで直接買いに来てください。取置きはしますのでと。そういった対応にしてからも、本当に美味しい野菜を提供したい飲食店のシェフたちが、わざわざ買いに来てくれています。本当に嬉しいですよね。

Q.それだけの店舗数をどのようにして確保したのでしょうか
クチコミもありますが、基本的には横浜市が行っているマッチング事業を通じて(誰に知っていただいているのか)知っていただいたり。またみなとみらいへのマルシェに出展することで、飲食店の方々と出会うこともあります。

Q.直接レストランと取引があることでどのようなメリットを感じていますか。
どんな食べ方をすると美味しいのか、今度作って欲しい野菜のニーズなどいろんな情報をもらっています。

Q.飲食業界はCOVID-19の影響を大きく受けています。どのように対応していますか。
直売所が9割でしたので、特に大きな影響がなかったのが実情です。むしろコロナ禍において、通勤が無くなり自宅で過ごす方が増えました。その際に自炊をする人たちも増えたからか、美味しい野菜でご飯を作りたいと、これまで少なかった男性のお客さんの来店も増えました。

Q.TSUBAKI食堂さんとの印象的なエピソードをお聞かせください。
A.(信頼関係が構築されていることが表れるエピソードをお願いします)。

私たちの直売所は月水金の14:00-18:00までがオープン時間です。この時間は飲食店さんにとっては、仕込みの大事な時間。この時間に外出をして食材を仕入れに行くこと自体が、やはり大変だし、やりたくないことだと思います。それでも、わざわざ苅部農園の野菜を使いたいと思っていただける方々が今、直売所に足を運んで買ってくれています。私たちは、そういった方々に支えられて、成り立っているので、より野菜作りに専念して美味しい野菜を提供していきたいと思っています。

その他補足: 売り先があること、出先があることが一番大事です。売り先がなければ、買い叩かれる。そのために自分たち直営の直売所があることが大事です。市場に出さなくても売れるようになり、直接お客様から様々な反応が聞ける。少量多品種になっていきますが、ニーズのあるものを作れるから売れ残らない。都市農業の魅力、農家側の視点、消費者側の視点を合わせて取り組んでいくことが大事だと思います。

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