PROJECT / マスマスカレッジ

ユニバーサルデザインのモノと情報の選択肢を広げたい【マスマスカレッジ レポート!】

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mass×mass collegeは、あたらしい価値を生み出している方々と一緒にこれからの時代に大切になってくるエッセンスを学ぶためのスクール。今回の『エシカル』をテーマにしたスクールでは、社会貢献につながるプロダクトを取り揃えたお店づくりや消費のあり方について、実践者の方々のお話からこれからのお店づくりのヒントを探って行きます。こちらは連続講座ですが、単発での受講もできるので、興味のある方はぜひご受講ください!
 

第1回 7/27(木) 19:00 〜 21:00 『エシカル消費の最前線を知ろう
第2回 9/15(金) 19:00 〜 21:00 『地域に根ざしたこだわりのお店づくりとは?
第3回 10/13(金) 19:00 〜 21:00 『広がるユニバーサルデザインの可能性を体感しよう
第4回 11/17(金) 19:00 〜 21:00 『福祉×ものづくり 障がい者作業所の商品開発の今』
第5回 12/8(金) 19:00 〜 21:00 『みんなでつくろう!横浜エシカル・キオスク』

▶︎プログラム詳細はこちら!

 
 
横浜エシカル・キオスク勉強会、第3回は東京・三軒茶屋の商店街内で医療福祉系セレクトショップHALUを運営するNPO法人Ubdobe代表・岡勇樹さん。唯一知っているという自己紹介の手話を披露して下さり、受講生の皆さんも真似をしたりしながら、和やかにスタートしました。
 
 

違和感を解消しないと楽しくなれない

 
20代で母親と祖父の死を経験する中で、いやが応もなく感じた医療と福祉の世界に対する「違和感」。ストレートに啓発活動や事業を始めるのがオーソドックスなやり方のようにも見えますが、高校・大学時代と音楽に明け暮れ、「自由に」「楽しく」がモットーの岡さんは少し違いました。
 
 
「課題を解決しようと始めると苦しくなる。まずは違和感をつぶさないと楽しくなれないと思ったんです。だからまず、医療・福祉の世界で自分が感じたたくさんの違和感を、3つに集約してみました。それが『医療・福祉業界は企画広報不足でイメージが低下している』『業界全体で人手が不足している』『医療・福祉サービス利用者もその家族も、知識や情報が不足していて閉じこもってしまう』です」(岡さん)
 

 
違和感の正体は分かった。では、何をすればいいかと考えた時、愛してやまない音楽が、実は使えるのではないかとピンと来たそうです。そこから岡さんはまず、クラブイベントでゲストトークなどを通じて医療・介護情報を伝える「SOCiAL FUNK! (ソーシャルファンク)」を2008年に始めます。
 

(ソーシャルファンク映像URL)
 
「病気や認知症って、予測不可能でいきなり来ます。特に、こうした話に興味がなさそうなライブハウスに来ているような層に伝えたいと思ってやっています。病気や介護の経験を持つ人が、誰かに少しずつでも伝えていくことで広がっていくことが大切なので」(岡さん)
 
 

モノも情報もワンストップで得られる場所を

 

 
このほかにも、2016年ごろまでの8年間、様々なイベントやデザインのプロデュースをやってきたUbdobeでしたが、患者団体などと接するうちに、岡さん自身だけでなく、色々な人たちが医療福祉にまつわる「違和感」を持っていることが分かってきたそうです。行政に問い合わせてもたらい回しにされる。治療や療養にまつわる選択肢が少なく、その選択肢が何かも分からない、といった声———。そこで、これまでの活動で培った医療福祉の現場職員のネットワークで当事者からの相談からの相談に応じられる窓口と、全国の福祉作業所で制作されたクールな商品とユニバーサルデザインの商品を揃えたセレクトショップ「HALU」を2016年、岡さんの母親の命日である7月7日に合わせて開店しました。
 
ここからは、HALUの運営を任されているUbdobeのshop事業部・吉井美香さんが、ポップで機能的でエコな要素もプラスされているHALUの取り扱い商品の魅力を紹介。ユニバーサルデザインのマグカップと食器を手に「『食』って生きていく上で一番大切です。食事が自分で満足に取れないと、自尊心が落ちてきます。障がいの有無に関係なく、一つ持っていればその人の生活にずっと寄り添っていけるのがユニバーサルデザインの食器の魅力です」と話してくれました。そう考えると、ユニバーサルデザインの商品というのは、本来は特別視することなくもっと身近にあっていいものだと思えてきます。
 

 
HALUでは、イベント出展をとても大切にしているそうです。そこで出会うお客様たちは、純粋に素敵な商品であればそれを評価し、その上で障害のある人たちによる制作なのだと伝えるとますます評価して買ってくれるからです。
 

違和感は好きなことで解決できる!

 
そんなHALUは間もなく、リニューアルします。まずは、商店街に面したガラス張りの建物というメリットを生かして、ポドキャストのラジオ局を開設、アーティストをゲストに彼らの福祉医療体験を話してもらう番組を発信していきます。また、全国の福祉作業所のスイーツを取り扱う「ソーシャルスイーツ」コーナーも設けるほか、子ども向けのプログラミング教室を開設して、リハビリが必要な子どもたち向けのプログラムを一緒に開発する「デジリハ」というプロジェクト。さらには、洋服のリメイクをはじめとする福祉作業所の商品開発拠点の機能、などなど「お店という枠を超えてショールームにしたい」と、岡さんは意気込んでいます。
 

 
未曾有の少子高齢化に突き進んでいく日本にあって、HALUのようなワンストップで医療福祉系のモノと情報に出会える場というのは、これからますますニーズが増えていくことでしょう。ご参加の皆さんからも「どうやったらHALUのようなお店を広げられるか?」という質問も出て、岡さんからは「例えば、“ショップインショップ”といって、他のお店やカフェ、あるいは色々な業態のショールームの一角にHALUのコーナーを設けてもらうということも考えています。必要なモノと情報が集約されることが大切だと思うので」と、お店という形態にとらわれないアイデアの一端を披露していただきました。
 
 
「Ubdobeの拠点を全国に広げるというよりも、やりたい人たちが各地で勝手に始めて広がるというのがいいと思う」という岡さん。「お店という拠点を持つことは、固定費もかかりリスクも伴うけれども楽しいもの。これからも、違和感を好きなことで解決することを大切にしていきたい」と、「自由であること」「楽しいこと」を身上とする岡さんらしいメッセージをいただきました。
 

 
今回のエシカルお土産は、HALUでも販売している東京都世田谷区の福祉作業所でつくられた焼き菓子ブランド「Holoholo(ホロホロ)」。その名の通り、口どけまろやかなクッキーで、固いものが噛みにくいお年寄りにとっても美味しく食べていただけそうな一品でした。

 
 

次回は11月17日金曜日!


 
次回11月17日(金)は、東京都墨田区内の福祉作業所発の雑貨をプロデュースする「すみのわプロジェクト」メンバーのデザイナー・關真由美さんをお招きします。Ubdobeとは対照的に、福祉作業所での制作物のプロデュースから始めてマーケティングの課題にも向き合っているすみのわプロジェクト、關さんのお話をどうぞお楽しみに!

 
▼参加申し込みはこちらの下方、エントリーフォームより!
http://massmass.jp/project/ethical_school2017/

 
 
 

 

 

 

 

 

 

 
 

関連情報:
NPO法人Ubdobe:http://ubdobe.jp/
HALU 〜Unique & Universal〜:http://halu-shop.com/

 
 
text  きむら・まき
photo  ほりごめ・ひろゆき