脱炭素ライフスタイルダイアログ vol.2
横浜市では、2050年までの脱炭素化「Zero Carbon Yokohama」が目指されています。このたびは、「脱炭素化に資する魅力的なライフスタイルの創出・浸透事業」の3カ年度事業の第二回イベントとして、横浜市とあいおいニッセイ同和損害保険株式会社の両主催による「脱炭素ライフスタイルダイアログ」が開催されました。
(関内イノベーションイニシアティブ㈱はイベント運営事務局として参画しました。)
開催概要
日時:3月20日(月)18:30~20:30
会場:YOXO BOX/オンライン参加
プログラム:
1.本事業の趣旨・前回の様子
2.取組紹介
3.トークセッション
4.質疑応答
5.今後のご案内
本事業の趣旨・前回の様子
高橋 一彰 氏
高橋氏からは、前回のキックオフイベントの内容について触れられ、基調講演やトークセッションを通じて、「地域」と「ビジネス」により面白い未来を描くことが、未来に希望が持てる脱炭素ライフスタイルにつながっていく可能性を感じたと話されました。
取組発表① 『持続可能な食と農をアグリテインメントな世界へ』
芹澤 孝悦 氏
芹澤氏は、ミュージシャンやエンタメ業界の経験などを経て、プランターを発明した祖父の会社に入社。農林水産省との関わりを持つ中で、日本の農業の将来が非常に厳しいことを知り、それから20年近くが経過した今も、状況が改善されているとは言い難く、日本の農業の未来が明るいとは言えないと指摘します。
海外では、コロナ禍以前より食糧需給への危機感があったことから、市民が野菜を栽培する“マイクロファーミング”の動きがあり、栽培された野菜は近隣の飲食店で利用してもらうこともできることから、“地産地消”が浸透しています。
日本では農業就労者が減少し100万人を下回る一方で、家庭菜園を行っている人が700万人もいる今日。プランティオ社では、誰もが気軽に野菜作りを体験できる“アーバンファーミング”を展開していて、収穫できた野菜は自分で食べるもよし、余剰分を飲食店に買い取ってもらうもよしといった、“地産地消”を可能にしています。
芹澤氏は、「楽しく活動して結果的に世の中がよくなる!」という考えのもと、農的体験や情報の発信などのアグリテイメントな世界を提案し続けています。
取組発表② 『ローカルメディアでつながる脱炭素ライフ』
北原 まどか 氏
北原氏は、キャリア初期から出版業界で活躍し、現在は、NPO法人森ノオトによる活動を通じて半径15分以内の情報を地元ライターが発信していくウェブメディアを運営しています。
森ノオトを立ち上げたきっかけには、ご自身の出産と東日本大震災を経験し「この異常気象が日常になりつつある中で、子どもたちの未来はどうなるのだろうか?」という強い危機意識があります。
その後、法人を立ち上げてからは、「便利さと引き換えに私たちは大切なものを手放しているのではないか」と常に問いかけ、たとえグローバルな課題であっても、地域の仲間と共に手触り感・納得感をもって変えていきたいと活動してきた森ノオト。自然と調和した暮らしを取り戻すことは、生活の主体性と、資源循環につながるといいます。
2013年からはリユース食器を使ったマルシェイベントを主催。当初は出展者の理解を得るため根気よく説明する必要があったものの、今では出展者の理解も浸透し、来場者のマイ食器持参も当たり前になりました。まさに、みんなで取り組めばゴミは減らせるという実践。
北原氏は、ローカルメディアを10年続けた結果、豊かで楽しい、学びになる小さい取組が人々の意識を変えるということを日々実感できていると語られました。
トークセッション
後半は、登壇者らによるトークセッションと、参加者を交えた質疑応答が行われました。
トークセッション・会場参加者からの質問(抜粋)
脱炭素ライフスタイルには、人材や地域資源の活用やシェアが有効だと考えられる一方、これまで機能してきた地域のコミュニティでは時代に合わない部分が見られることから、今後のコミュニティのあり方はどうなると思いますか?(コメンテーター:高橋氏)
芹澤:
既存の価値観のコミュニティではなく、本当に人が安らげてお互いの顔が見える場所をつくらないと、都心部でも郊外でもコミュニティは崩壊すると思います。私たちの農園はサードプレイスとしても機能していると感じます。
北原:
芹澤さんの農園が各地の団地にあったら、絶対によいと思う。参加を強いなくても、遠巻きに見ていた人が徐々に加わるような小さい成功事例は、多様な人々が参加できる機会を生み、世の中がよくなるきっかけになると思います。
自分の小学生時代は多くの土に触れる機会がありましたが、教育・ライフステージという観点で何か考えていることを伺えますか?(会場参加者)
北原:
子どもにとって土に触れる、作物に触れるという経験の有無は大きいと思います。実は芹澤さんのような方の活動により、農村部より都会や郊外のほうが体験機会は多いと感じます。
世界と比較して日本人の農的活動はどういう状況でしょうか?(会場参加者)
芹澤:
アーバンファーミングは米国では貧困が発祥の由来だが、欧州ではガーデニングがステイタスだという違いがあります。日本では、自分の食料の出処や入手途絶への懸念、安心安全は自分たちでマネジメントすべきという動機で始めるという傾向があるようです。
今後のご案内
戸田 成俊 氏
脱炭素に関する実証実験を実施予定であり、市民・企業による取組事例を求める呼びかけがありました。
第二回 脱炭素ライフスタイルダイアログを終えて
2024年以降には渋谷に世界最大のアーバンファームができるそうです。アーバンファーミングには地域活性・食農教育・環境貢献・食料自給・生物多様性・ウェルビーイングなどに興味・関心のある人が集まります。都心の繁華街から野菜のみならず、何が収穫できるのか楽しみです。また、北原氏による提言にあるように、人々の知恵が集まれば、暮らしの実感の中から、色々な脱炭素ライフスタイル案を生み出せると感じます。
今回のイベントでは、私たちの生活スタイルを、脱炭素にむけてシフトチェンジしていくためのアイデアを、具体的に学ぶことができたのではないかと感じています。