マスマスでは第1金曜日に、あたらしい価値観やサービスを生みだしている起業家やプロジェクトリーダーをお招きしてお話を伺うマスマスカフェを開催してきました。
2019年12月は忘年会スペシャル企画として2回開催し、第2弾では2年ぶりの秋田と繋がるナイトとしてハバタク株式会社代表の丑田俊輔さんにお越しいただきました。
▶︎(12/13)マスマスカフェ〈特別編〉|遊びと学びの「エリアブランディング論」
イベント前に、そんな丑田さんのオフィスがあるちよだプラットフォームスクウェアにマスマスの森川がお邪魔し、お話を伺いました。
身体性を大切にした、プロジェクト創発や贈与経済など、ローカルエリアならではのプロジェクトマネジメントのお話に花が咲きました!
イベントレポートとは別に、今回はインタビューの内容をお届けさせていただきます。ぜひご覧ください!
五城目町との出会い
森川 今日はよろしくお願い致します!
2年前に五城目のイベントをマスマスで行ってから、2回目となります。
最近の五城目の魅力を知るうえで、東京&五城目でさまざまなプロジェクトに関わっている丑田さんにお話うかがえたらと。
まずは、丑田さんって何者なんですか?すごい活動分野が広くて笑
丑田さん そうですよね。元々学生時代に、ここ「ちよだプラットフォームスクウェア」(ちよプラ)の立ち上げに関われせていただき、2〜3年ほど運営のお手伝いをしていました。
そのなかで、地域と連携したり、地域のなかで交わりながら事業や文化が育っていくというプロセスを目の当たりにしたことが一番最初の原体験になっています。その後IBMという会社で、さまざまな経験をして。
そして2010年にハバタクを起業することになって、“ちよプラ”に入居者として戻ってきました。
会社名は日本の若者がもっと世界で活躍・羽ばたいていって欲しくて【ハバタク】という意味で付けたんですが、日本のローカルを知りたいという意識も芽生えはじめて。
そこから、日本のローカルや文化を深掘っていくことで世界とつながるような世界観をやってみたいなと思ってた時に、たまたま“ちよプラ”に五城目町が入居してくれたことがきっかけで、自分も五城目へ行き、街を案内してもらいました。
秋田市から40分くらいでいける距離感、観光地ではない里山の風景もあり、朝一も500年続いたり。暮らしや文化のところに惹かれて。一番は妻の実家が秋田だったということが大きいと思います。
当時、BABAMEBASE(廃校活用のシェアオフィス)の立ち上げも始まっていて。田舎の暮らしに根ざしながらも新しい仕事を生み出すような起業家が集まる場所というコンセプトに共感して、第1号入居者として、入りました。
森川 なるほど、前職でグローバルに動いていたからこそ、あえてローカルに身を置いて活動することに価値を感じていたのですね。
いまは東京と秋田の比率はどれくらいですか?
丑田さん 秋田にいる時間が一番多いですね。東京には週1程度で来ていますが、山が見たくなるので1泊で帰るようにしています。
森川 いいですね笑 丑田さんが教育に興味をもちはじめたきっかけはなんでしょうか?
丑田さん IBMのグローバル戦略チームに所属していた頃、ダイナミックな時代の動きを感じました。
一方で、日本の教育システムは高度経済成長期型から中々変わりにくい。ちょうど子どもが生まれるタイミングでもあり、関心を持ちはじめたんです。
森川 そうでしたか。生まれてくる子どもを通じて、より教育に意識がいったのですね。
丑田さん まずは北欧、アメリカ、アジア、そして日本の教育現場を旅するところからはじめて、世界と日本の学校をつなげていこうということになりました。
仮説や計画を立てて物事を進めるのではなく、身体性を大切にしてみる
森川 マスマスカフェでは、ローカルを舞台に活躍している起業家やプロジェクトリーダーの方々にお話を聞く機会を数多く作っているのですが、最近ではエリアブランディングの視点で地域を見る機会が増えてきています。
丑田さんの場合は“五城目”というエリアをどう捉えて、どんな視点でプロジェクトに関わっていますか?
丑田さん まず自分の中で五城目では、市場動向や綿密な計画を起点とした事業づくりではない形で進んでみようと。身体性やローカルの時間軸の中で感じることを、関係性の中から創発することで、個を超えたクリエイティビティが結果的に現れるんじゃないかと思っていて。
ハバタクは教育の会社なので、学びを通して、地域を醸すという大きなスローガン掲げててます。学びはいろいろ一緒にできる要素があると思っていて、狭義では小中学校の教育環境への取り組みもありますが、大人たちが学び続ける環境をどうするかとか、アントレプレナーシップのような地域から仕事を生み出す教育も必要だよねとか。暮らしの中で学び合うコミュニティラーニングの視点では、市民大学や朝市がチャレンジの場になっていたり。朝市がチャレンジの場になっていたり。そういう場も広義では人間の学びの場になっているはずですよね。
街のいろんな場所に学びの要素をいれていく。その土壌ができればいいなと思っています。
“ただのあそび場”は、さらに下層で土壌の下、地下水みたいなイメージですね。
学ぶというと意識高い系の世界になってきてしまうことにもなるので、それを手放して、目的性も言語性も手放して、ただ遊ぶという営みが結果的にひとの探究心を湧き上がらせて、学びたいという気持ちにさせたり、遊んでたらその結果それが仕事になるということが起きないかなと。
これからそういう時代になるんじゃないかと思っていて、“学びを手放した先の学び”をこれから数年くらいキーワードとしています。
“シェアビレッジ”も教育事業とは言ってないけど、広義の教育事業の一つと捉えています。
共同体のあり方をどうアップデートしていくかをテーマにしていてローカルとローカルがつながっていく。トランスローカルな新しいコミュニティをつくることで人間の学びがどう拡張していくかをやりたいのが、裏テーマにあります。
「ここで学びましょう」っていうと関わる人もちょっと構えてしまう、“シェアビレッジ”に泊まる中で、カヤを買ったり、集落の貨幣経済とは違う営みに触れてみたり、2拠点居住や2拠点教育の取り組みを進めていたり。そういう子供にとっても大人にとっても新しい学びの世界を開いていくような、ライフスタイルや共同体の再定義に興味があってやっています。
森川 面白いですね。すべては身体性というか身を置くことで感じる何かを形にしていく。いいですね!
エリアブランディングの視点でも、そのエリアの歴史や特色を肌感覚で理解できてはじめて、何か地域に価値あるものを生み出せるはず。その視点から考えると、すごく腹落ちしますね。
なんかわからないけど、いい感じ。それがいいんじゃないか
丑田さん やはり中央集権的なまちづくりに行かないような、振る舞い・生き方・働き方をしたいと思うことはあり。村長がすごいとか、○○さんがすごいとか、局所的にまちが盛り上がって、移住者がきても、、、それも成功の一つだとは思うけど。もともと地域活性とかまちづくりとかには興味がなくて、あくまで人が学ぶ環境をどう面白くするかに興味があるので。
森川 そうですね。わかりやすい何かを見出して、それで理解した気になっちゃうと、消費されちゃいますもんね。まちづくり的な“あるある”かもしれません。
丑田さん 五城目町がよく言われるのは、一言で言いにくい町だよねと。BABAMEも延べ20社くらい事業者が集っているけど、分野は様々で。地元のひとも、外の人も半々。
多様性と多層性。スタートアップやベンチャーもいれば、企業もきていたり、小商いやローカル経済をやるひとも増えていて。酒蔵のや農業、第2創業、伝統産業、一次産業がカオスに混ざり合っている。
ひとつの爆発的なやつがいるわけではなく、いろんな人がいるのが面白いと思っていて。時間もかかるけど、パラパラと移住者やUターン者も増えてきて、大学生が新卒で入ってきたり。結果的に五城目のらしさになっている。
森川 みなさんのアクションによって街が成り立ってきている。全体でそうなってきているということですよね。
まちの進化・新陳代謝について|地域が昔から持っている贈与経済とは
丑田さん 常に変化や代謝が起きてこないと淀んでくる。最初の5年間はカルチャーをつくる上でいい感じになって来ていて。でも次のビジョンというか、あり方を作っていくタイミングになっていて。ぼくらも次の人が見つかったらハバタクも街の空き店舗に出てくからって言ってて。追い出して、町に溢れていく。
成長した人が地域に町に溢れていく。拠点に新しい人が入ってくるという循環がダイナミックにおこってくるといろんなドラマが生まれてくる。そのタイミングに差し掛かっている。
森川 僕らもそういうタイミングですね。
コワーキング・シェアオフィスなので成長して退去するメンバーも多いんですね。でも、そこに新しい人が入ることでまた予想出来なかった化学反応が起こる。それがいいですよね。
丑田さん 徐々に人が集まり始めた場所はあるけど、BABAMEの次の進化はまだまだこれから起きてくるかも。
森川 聴きたいことが1つあって、“越境し合う学びのシェアコミュニティ”。
これってどういった意味で使っているのですか?
丑田さん 自分のローカルやコミュニティから越境すること自体を環境自体に仕込んでおかないと、閉塞感が出てしまいますよね。学校も閉じるといじめが起こる。適度に開かないといけない。けど、開きすぎて自由すぎると、最近のシェアリングエコノミーが自由主義になりすぎて、資本主義に飲み込まれたり。
もっとコミュニティへの所属とか。それでいて自由とか。そのさじ加減、両義性を持っている。その感覚を持っていけたら、ローカルとローカルを越境することで、互いのリスペクトも生まれると思っています。
森川 面白いですね。越境を最初からデザインしておかないと、閉塞感ですぐ成長が止まってしまうと。確かに。
シェアオフィスやコワーキングのコミュニティも、地域から様々な人たちが出入りする仕組みを必ず作っていますね。そうすることで、アイデアや想いが停滞しないというか。
今“コワーキングスクールキャンプ”という、全国でコワーキングスペースを作りたい人たちが集う学びの場を行なっているのですが、横浜と奈良、横浜と岐阜とか地域を超えた人と情報の交換に興味があって。
みんなでどう局面を解決していくのか、緩やかにつながりながら、それぞれの地域で切磋琢磨するコミュニティづくりにチャレンジしています。
丑田さん 人間の関係性をお金の外側で描いてみみる。貨幣の経済の中ではお金でやりとりが続けば、関係性を続けることができる。でも、里山集落のおじちゃんおばちゃんがめちゃめちゃ得意なのが贈与経済なんですよね。
シェアビレッジやってたとき、ある日近隣のおばちゃんが世話してくれていて、なにかとお漬物をくれたり、おじちゃんが庭の草刈りをしてくれたり。大変お世話になったんです。
なので、一度、東京へ行ったときにお菓子を買ってお土産に持って帰ったんです、すると「いやそうじゃないんだ!」と怒られて。お菓子はお金で買ってわざわざ届けるもの。自分は贈与したつもりが、相手は貨幣で返してきたみたいな感覚になって。
向こうは何かして欲しいわけではないけど、何かあったときに、手伝ってもらうみたいな。ペイフォワードな関係性が日本の昔ながらの集落の関係性の作り方なんですよね。あー、そこから学べることは多いなと。
森川 そのお話は面白いですね。
たとえば多拠点居住を進める時、お金や合理性だけで空間を使うだけだと、隣の人のことは全く気にしないでってなってしまいかねないですね。一歩間違えると、そういう人ばっかりローカルにやってきてしまうとか。
丑田さん シェアビレッジは今、次の展開に向けて準備しているんですけど、機能的に田舎を増やすというよりは、情緒的な拠点をどれだけ増やせるかに振り切りたい。そのための準備をしています。
森川 いいですね。ぜひ12月13日(金)のイベントで、そのローカルならではの贈与経済のあり方、シェアビレッジの次展開についても詳しく聞かせてください!
今日はお時間作っていただいて、ありがとうございました!
丑田さん 13日(金)、横浜関内ですね。楽しみにしています。よろしくお願い致します!