みなさん「補助犬」という言葉を知っていますか?
盲導犬、介助犬、聴導犬、これら3つを総称して補助犬と呼びます。障害のある方々のサポートをするための特別な訓練を受けた犬たちのこと。盲導犬は比較的知られていても、介助犬や聴導犬は知られていないこともしばしば。また、盲導犬をあたかも行き先まで連れて行ってくれる“ナビ”のように思っている方もいるそう。補助犬を見かけたら、私たちはどのように接するのがいいのでしょう?当事者でなければまだまだ知らないことがたくさんあるようです。
INNOVATION SCRUM PROGRAM
このプログラムは、マスマスを運営する関内イノベーションイニシアティブ株式会社が実施するソーシャルビジネスを経営する8事業者を半年間“地域”全体で応援する、アクセラレーションプログラム。
横浜で活躍する起業数年目のソーシャルビジネス事業者と、横浜で働き暮らす市民の皆さんの中から“プロボノ”という新しいボランティアワークを通じて、8組のソーシャルビジネス事業者がそれぞれの課題を“持続的”に解決していけるビジネスへレベルアップするためのプラットフォームとして平成28年度ソーシャルビジネス成長支援事業(横浜市経済局委託事業)の一環として行われます。
▶プログラム詳細はこちら
2月25日(土)は本プログラムの発表会!9名の事業者のプレゼンをぜひお聞きください!:
http://massmass.jp/project/scrum2016_final/
“補助犬”についての理解を深める活動をしている
NPO法人日本補助犬情報センターって?
「ヨコハマ・イノベーションスクラム・プログラム」に参加している事業者の一つである、NPO法人日本補助犬情報センターは、横浜に拠点を置きながら、補助犬についての理解を深める普及活動や、障害者の社会参画を目指し情提提供を行なっている団体です。
2002年に「身体障害者補助犬法」が成立し、障害者が補助犬を連れて公共の場に出ていくことが可能になったにも関わらず、いまなお飲食店において補助犬を同伴した入店を断られることが絶えないそうです。日本補助犬情報センターでは、そのような同伴拒否ゼロを目指し、潤沢とはいえない人員体制のなか、日々奮闘しています。
▶︎NPO法人日本補助犬情報センター
補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)に関する調査研究および情報提供事業、相談および支援事業、啓発事業などの活動を通して、障害者の自立と社会参加を目指している。3年前に織編成を行い、新しい組織のもとで具体的なアクションをおこしたい。
金曜日の夜にも関わらず、30名近くの方々にお集まりいただきました!
毎月第1金曜にmass×mass関内フューチャーセンターで行なっている「mass×mass café」に、このたび日本補助犬情報センターの橋爪智子さんが登場。
『街のユニバーサルデザインを考えるナイト〜補助犬って何だろう?街のあたらしい解像度と出会う!暮らしのユニバーサルデザインを深掘ろう!〜』と題し、橋爪さんのほか、川崎市視覚障害者情報文化センターの中村透さん、NPO法人横浜ジェントル倶楽部の岡村道夫さんをお迎えし、ビール片手にフランクな雰囲気のなか、トークセッションを行ないました!
わたしたちにできることって何だろう?
補助犬ユーザーからみる世界
まず橋爪さんからは、盲導犬、介助犬、聴導犬、それぞれについての基本のお話。
盲導犬は目の不自由な方をサポートする補助犬ですが、できるサポートは、歩行の際に「障害物を知らせる」「曲がり角を知らせる」「段差を知らせる」の3つだけ。けっして犬が障害者をリードしたりナビゲーションしたりするものではありません。「Go」「Straight」など、視覚障害者が口頭で指示を出し、補助犬はそれに従う。もしその時に段差があれば、立ち止まって教えるのが盲導犬の役目なのです。色も人間のように見えている訳ではないので、信号も青信号かどうかは分からないため、視覚障害者が周囲の音で判断するそうです。
目が見えないといっても、全盲の方は1割ほど、弱視・ロービジョンの方が大多数です。さらに、見えている範囲が狭かったり、全体がすりガラスのような視界だったり、一口に目が見えないといっても症状はさまざま。また、視覚障害者のなかでも盲導犬を連れている方はごく一部で、白杖を使う方も多い。健常者といわれる私たちが思う以上に、視覚障害者の状況は千差万別、知るべきことがたくさんありそうです。実際、弱視の方が、白杖を使って外出中にスマートフォンの画面を見ていたところ、通りすがりの人に「嘘つき!」と言われた、なんていう悲しいことも。知らないというだけで障害者を傷つけます。
介助犬は、手と口を使って、物を拾ったり、冷蔵庫から物を取ってきたり、車いすで生活する障害者をサポート。聴導犬は、目覚まし時計のアラームやインターホンの音を知らせるなど聴覚障害者のサポートをします。
どれもこれも「健常者が当たり前だと思っていることを障害者も当たり前にできるようにする」ための大切な補助犬の役割。ちなみに、補助犬を見かけたらそのとき犬たちは「お仕事中」なので、むやみに“犬”に声をかけたり触ったりせず、障害のある方ご本人に直接声をかけてほしいそうです。
2番手に登場した中村さんは、白杖歩行訓練士。
トークでは、駅や広場などの公共の場が、障害のある方にとって使い勝手はどうなのかを、写真を見せながらユーモアたっぷりに説明してくださいました。
エレベーターに誘導する点字ブロックが、扉の目の前に誘導しているものと、押しボタンの前に誘導しているものと路線によって違ったりするそうです。目が見えない人にとってどこへ誘導するのがもっとも親切なのかを想像する力が問われます。
最後は、車いす生活をされている岡村さん。
横浜は、交通も発達していて、比較的ユニバーサルデザインが進んでいるものの、やはり山坂も多い土地。デザインやシステムがどんなに発達しようとも、人の関心が大切だと言います。
ちょっとした挨拶でも構わない、そばにいる人が受け入れる、自然にスマートに接する大切さを話されていました。
まとめ
今回のmassmass caféには、盲導犬、介助犬、聴導犬を連れた方、車いすでお越しの方が参加してくださいました。
実際に補助犬が“働く”姿を見ることができて、3名のお話の理解がより深まりました。そしてなにより、多様な人たちが一堂に会し、アルコールのおかげもあって打ち解け、どの方も楽しんでくださっているのが印象的でした。
「補助犬を連れているということは、犬とともに社会参画をするという意志」
「(一見障害が無いように見える人が)補助犬を連れていることは、障害を見える化しているということ」
「補助犬を見たら、その犬を連れている人が、なにを必要としているかイメージしてほしい」
「声をかける勇気を(補助犬にではなく人に)」
「英語のMay I help you? のような気軽さで声をかけてほしい」
スピーカーや参加者の方たちから聞かれた言葉はどれも新鮮。障害者が何かと生きづらさを感じてしまう今の日本の社会で、当事者の話を聞き、互いに理解し合い、肩肘張らない関係性を作る大切さを感じたイベントでした。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、日本補助犬情報センターの活動に今後ますます注目していただきたいと思います。
今回取材をしたNPO法人日本補助犬情報センターをはじめとする、橫浜市内のさまざまな事業者を支援している「ヨコハマ・イノベーションスクラム・プログラム」。2月25日にはYCC ヨコハマ創造市センターにて『成果発表会』を行ないます。ただいま参加申込受付中!ぜひとも橫浜を舞台としたソーシャルビジネスの「今」を見にいらしてください。
『成果発表会』参加申込みはこちら。http://massmass.jp/project/scrum2016_final/