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PROJECT / INTERVIEW

【INTERVIEW】タイププロジェクト株式会社 両見英世さん 『まちに携わる方たちと、フォントへの思いを共有しながら育んでいけたら嬉しいし、面白いなって感じています。』

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2Fシェアオフィス「TENTO」入居者

タイププロジェクト株式会社
両見英世さん
 

◆プロフィール
1982年生まれ。千葉県出身。ウェブサイト制作会社を経て、2007年タイププロジェクトに参加。タイププロジェクトが掲げる都市フォント構想の推進メンバーとして、「cityfont.com ― voice of a city.」の立ち上げに携わる。都市フォント構想を背景に、2009年より横浜をテーマにした書体作りを開始。2010年6月2日、横浜開港記念日に合わせて「濱明朝」の漢字、欧文の試作を公開。現在、地域×クラウドファンディング「FAAVO」にて資金調達に挑戦中。(https://faavo.jp/yokohama/project/977

 

濱明朝プロジェクト / フォントを作る人ってどんな人?

広告やチラシ、街中のサインがふと目にしたとき、みなさんは「かっこいいな!」とか「おしゃれだな」と感じたことはありませんか?
その中でなにげなく使われている文字も、実はデザイナーさんによってデザインされています。
 
今回お話を伺ったのはフォントデザイナーの両見英世さん。タイププロジェクト株式会社に所属し、現在はマスマスにあるシェアオフィス「TENTO」を拠点に横浜をイメージしたフォントである「濱明朝」の開発をしています。
このインタビューでは、両見さんにフォントデザイナーのお仕事のこと、現在開発中の「濱明朝」について伺いました。
 

両見さんとフォントとの出会い / 生産者のポジションって?

ーー 両見さんがフォントデザインに興味を持ったキッカケはなんでしょうか?
 

両見英世   フォントデザイナーという仕事を知ったのは学生時代です。もともとウェブデザインを学んでいたのですが、デザインのなかで使用される文字の形によって、印象が大きく変わると肌で感じていました。学生時代に「Helvetica」というフォントを知って細いのから太いもの、文字の幅の広いものから狭いものまで、とにかく種類が豊富で、その一つ一つを人の手で作っていることに気づいた事が大きかったですね。
 

ーー 文字の形のなかに一貫性を持たせるのって難しそうですね。
 

両見   そうですね。ひとつのフォントを作るのに2〜3年くらいはかかるんですよ。漢字だと縦画とか横画とか払いなど一つ一つのストロークの様式を決めるところから始めます。その様式に沿って漢字を作っていくのですが、初めはどうしても新しく作るフォントに慣れてないのですが、進行するにつれて、自然とそのフォントが上手くなってくるんですよね。
 
すると、最初の頃に作ったフォントがなにか違うぞってなることがあるんです。それを直すじゃないですか。そのループを繰り返すのですが、やりすぎちゃうと永遠に終わらなくなってしまいますね。それらを見極めて修正を行うことで徐々に一貫性を帯びてくるんじゃないかなと思います。忍耐力のいる作業ですが、これがこの仕事の醍醐味かもしれないですね。
 

ーー フォントデザイナーの仕事についてよく分からないという方も多くいると思います。
 

両見   レストランに例えてみると分かりやすいです。レストランにはお食事をするお客さんがいて、それを調理をするシェフがいて、食材を作る生産者さんがいますよね。フォントデザイナーはこの3者のなかで、生産者に当たるんじゃないかなと思うんですよね。調理する人は、グラフィックデザイナーで、お客さんは、まさに依頼主ですね。立ち位置としてはそういう感じです。
 
農家さんが、自分たちが作った野菜がどう調理されるの分からないように、フォントデザイナーもシェフであるグラフィックデザイナーさんにどう調理されるのか分からない。そういうところは農家さんと似ていると思います。そういう意味でクリエイティブ産業という枠組みの中で生産者的立ち位置なのかなとは思いますね。
 
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プロセスを大事にしたい / クラウドファンディングを通じて達成したい想いとは?

ーー どのような経緯で「濱明朝」を開発しようと思ったのでしょう?
 

両見   2008年の暮れくらいに何か地域を反映したフォントを作ってみると面白いかもねといったアイデアが会社で出たんですよね。で、色々と調べてみて、丁度その翌年、2009年に横浜が開港150周年を迎えるということで、何か出来ないかなと思ったのが横浜でプロジェクトを行うきっかけになりました。
 
それで、年が明けて、横浜でいろいろなイベントが催される中、横浜のブランドを市民参加で考えようといった主旨のワークショップがあったので参加させていただいたんです。そこでは、500人もの参加者が集まり、横浜のイメージを模造紙に書き出すといった作業を行いました。実際のワーク自体は1テーブルに5人くらいが着席して行ったので模造紙は全部で100枚くらいになったのかな。とても大きな規模で圧倒されましたね。
 
で、フォント作りのための要素をどうしようかとフィールドワークなども重ねていたのですが、このワークショップから出されたキーワードが参考になるんじゃないかなと思ったんですよね。丁度、この事業のホームページに模造紙の写真がアップロードされていたので、これをダウンロードして、キーワードを全部抽出しました。実際には姉に手伝ってもらったんですけど、出してみると全部で2,000個くらいにのキーワードが書かれていました。その中から「おしゃれな街」とか「歴史とともに港がある」とか「伝統と新しいものの共存」というキーワードが多く見受けられたんです。ワークショップでは、横浜は港だけではないという意見もありそれは目からウロコなお話もたくさん伺ったんですが、キーワードを眺めながらどこに内側の声があるのかを感じて選びました。それでフォントを作るにあたって、「港」をコンセプトにしようと悩み抜いて決めたんです。
 
また、ワークショップに参加する前に地域での様々な取り組みを紹介するシビックプライドという本に出会い、刺激を受けました。中でもイギリスのブリストルの事例で、担当した会社のスタンスが参考になりました。そのスタンスというか方法が、プロジェクトごとにその地域に事務所を構えてプロジェクトを進行していくというものだったんですよね。それいいなあ、と。
 
僕も休日に横浜へ行き、街を歩いたり写真を撮ったりしていたんですが、やはり場所を持つのと持たないのでは違うだろうな、と感じていました。
 
そこで安めのアパートを借りてみようかなと思っていたときに、見つけたのが中華街のシェアオフィスでした。そこに、アーツコミッション・ヨコハマの助成を受けて入居させていただいたんです。お金の面ももちろんなのですが、助成を受けることで、いろいろなまちづくり関係のプログラムをご紹介いただいたり、とにかくいろんな方と出会うことが出来ましたね。はじめに入居した中華街のオフィスは昨年の5月に退去し、今はマスマスのシェアオフィス「TENTO」におじゃまさせて頂いているのですが、これもいろいろなご縁によるものです。
 
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ーー 『濱明朝』のサンプルをみて面白いなと思ったのは海から見た横浜を表現しているところです。つまり住んでいる市民でも海側から横浜を眺めることってあまりなくて、内から見ているイメージ。海側、舟守の視点からの風景を選んだのはなぜですか?
 

両見   それは、やはり「歴史とともに港がある」というキーワードからですね。あとはロケーション的にもすごく魅力的だなと思います。
舟守になった気分で街並みを見ると、歴史的建造物からランドマークタワー、パシフィコ横浜など新旧の建築物が一望できるじゃないですか。なんか港と共に歴史があるというのが腹にストンと落ちたんですよね。で、水平線にドスンと建物が立っている景色を太い明朝体に見立てて、これで行こうと大枠が決まったんです。で、風景写真と一緒で、拡大するとディテールが見えてくるんですが、横画の先端を船の船首のプロポーションと重ね合わせるといったことをしています。
 
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横画は港を往来するフェリーや水平線を、縦画は海上から望む建築群に見立てデザインされています。
 
ーー このフォントで何を一番大事にされているのでしょうか?
 

両見   「濱明朝」に関して言えば、プロセスですかね。フォントを作るだけだったら、横浜に事務所を借りる必要はある意味でないじゃないですか。事務所に引きこもって作った方が捗るかもしれない。
 

ーー 効率的ですよね。
 

両見   そうです。だけど、こうやって横浜に事務所を構えていろんな人に知ってもらいながらやっているのはプロセスを大事にしたいからです。「濱明朝」の開発過程から多様な方々と協働を図りながら発信をしていき、広く長く使われることで、このフォントがまちの風景のひとつになればと思っています。
 

ーー なるほど
 

両見   表現が難しいのですが、みんなで育て上げたというムーブメントのほうが面白いんじゃないかなって。はい、できました、使ってください!っていう一方的な感じよりもまちに携わる方たちと、フォントへの思いを共有しながら育んでいけたら嬉しいし、面白いなって感じています。ただ、何が何でも濱明朝という必要もなくて。それぞれの場面で適切なフォントというのもあると思うし、そのほうが健全ですよね。
 
レストランの例えと言い、再び食の話になってしまいますけど、ご馳走として松阪牛も神戸牛も美味しいけど、神戸の人は神戸牛の方を好んで食べるんじゃないかなって思うんですよね。でも、神戸の人がご馳走に神戸牛を食べるという縛りは出来ないじゃないですか。何がなんでも使って欲しいというよりは、横浜からこういうフォントが出てきたから、ちょっと意識して使ってみようかな、なんて気分で思っていだけたら嬉しいなって思います。
 
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一文字一文字ていねいに手作業でデザインをしていく。
ーー この『濱明朝プロジェクト』でクラウドファンディングに挑戦していますよね。キッカケはなんだったんですか?
 

両見   まず、ひらがな、カタカナ、アルファベットと、教育漢字までが出来上がったんです。全部で1,500文字くらいですね。最終的には9,500文字くらいになるので、まだまだなのですが、小学校6年生までの教科書に入るような文章は組むことが出来るんですね。なので、この段階で、いろいろな人の声を取り入れたかったというのが第一にあります。完成までに様々な人に使ってもらって、声を取り入れる。デザイナーの方からの声が欲しかったのと、横浜市民からの声も欲しかった。あと、その2つに属さないような、単純に文字が好きといった人からの声。この方法をどうしようかという中で、クラウドファンディングという選択肢がありました。
 
もう1つは、フォントを作るにはそれなりに体力がいるんですね。複数名のチームで数年かけて制作するので。そんな中で、クラウドファンディングという手法が新しいフォントづくりの環境をつくれるかもしれないという期待もあります。
 

ーー どういう風に応援して欲しいとかありますか?
 

両見   まずは、「いいね」をして欲しいです。笑 リアクションがあるととても嬉しいんですよ。お叱りとか批判とかも実は励みになるんです。フォントデザイナーはあまり表に出ることは少ないんですけど、とはいえ作っている側として何かしら反応は欲しかったり。今回はおかげさまで、クラウドファンディングのお知らせの反響があり、たくさんの方がコメントをしてくださっていて、めちゃくちゃありがたいです。
 
フォントデザインするのってある意味で孤独な戦いなんです。これでいいのかなっていうのを反芻しながらやってるので。だから反応があるのはとても嬉しいですね。是非、応援いただけると嬉しいなと思います。
 

ーー 両見さん、本日はありがとうございました!クラウドファンディング応援しています!
 
 

FAAVO横浜
「横浜から生まれたフォントをつくろう!『濱明朝』をまちの風景に」

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濱明朝は、さまざまな都市独自のフォントをデザインするプロジェクト「都市フォント」のひとつとしてデザインされており、キャプション・テキスト・ヘッドライン・ディスプレイの4つのカテゴリーでそれぞれ6ウエイト、計24フォントで構成されています。
 
港を往来するフェリーや水平線をイメージした ほっそりとした横画に対し、海上から望む建築群を表現したどっしりとした縦画の太さを持たせた明朝体。試作フォントは馬車道150周年記念ロゴコンペで使用されたほか、地元企業などとタイアップしたうちわなどで利用されています。現在までに1500字が完成しており、2017年6月の販売時には9500文字を収録予定。
 
クラウドファンディングの期間は2016年4月10日まで。目標金額300万円。支援者には先行して濱明朝のミニセット版やフルセットが支援金額に応じて提供されます。数量限定で濱明朝体を使用したオリジナル名刺や、濱明朝と横浜帆布鞄がコラボレーションしたターポリン製のオリジナルトートバッグなども。詳細はFAAVO横浜「濱明朝プロジェクト」のページをご覧ください!
◎濱明朝プロジェクトページはこちら。「いいね!」よろしくお願いします!
https://faavo.jp/yokohama/project/977
 
◎メディアで掲載されました!
(2016.01.13) 「ヨコハマ経済新聞」に本プロジェクトが紹介されました。こちら
(2016.01.12) 「ASCII.jp」に本プロジェクトが紹介されました。こちら
(2016.01.12) 「ITmediaニュース」に本プロジェクトが紹介されました。こちら
(2016.01.12) 「マイナビニュース」に本プロジェクトが紹介されました。こちら