mass×mass collegeは、あたらしい価値を生み出している方々と一緒にこれからの時代に大切になってくるエッセンスを学ぶためのスクール。今回の『エシカル』をテーマにしたスクールでは、社会貢献につながるプロダクトを取り揃えたお店づくりや消費のあり方について、実践者の方々のお話からこれからのお店づくりのヒントを探って行きます。こちらは連続講座ですが、単発での受講もできるので、興味のある方はぜひご受講ください!
第1回 7/27(木) 19:00 〜 21:00 『エシカル消費の最前線を知ろう』
第2回 9/15(金) 19:00 〜 21:00 『地域に根ざしたこだわりのお店づくりとは?』
第3回 10/13(金) 19:00 〜 21:00 『広がるユニバーサルデザインの可能性を体感しよう』
第4回 11/17(金) 19:00 〜 21:00 『福祉×ものづくり 障がい者作業所の商品開発の今』
第5回 12/8(金) 19:00 〜 21:00 『みんなでつくろう!横浜エシカル・キオスク』
エシカルキオスク勉強会第4回のゲスト講師は、東京都墨田区にある障がい者作業所の自主生産品の開発、PR、販売までを支援するプロジェクト「すみのわプロジェクト」のメンバーでデザイナーの關(せき)真由美さん。障がい者作業所を中心に、区内のクリエイター、企業、行政が協働している仕組み・活動についてお話いただきました。
デザイナーはもっと社会貢献できる存在
關さんは元大手家電メーカーの工業デザイナーで、主に美容家電のデザインなどを手がけていました。
在職中の2007年に米ニューヨークで開かれた、途上国の課題解決に貢献したデザインを持つ製品などの展示会を観る機会があったそうです。この展示会の狙いの一つは、世界人口の90%はデザイナーが携わった製品の恩恵を受けていないという現状を世の中に問いかけるものでした。この時關さんは、デザイナーはもっと社会貢献できる存在ではないかという気付きを得たそうです。
数年後、第2子の育児休業中にすみのわプロジェクトと出会い、商品開発のデザインに関わることになりました。その決め手は2007年に観た展示会。自分が関わることで、障がいを持った人たちのものづくりの可能性が広がるかもしれない、「(すみのわプロジェクトは)私にとっての90%になるのではないか」と直感した關さんは、会社を退職して本格的にプロジェクトに参加するようになりました。
障がい者の「真の自立」を目指して
すみのわプロジェクトは、区内在住在勤のクリエイターコミュニティ「すみだクリエイターズクラブ」と「墨田区福祉作業所等ネットワーク KAI」、東京都墨田区(行政)が協働して実施している、地域連携型福祉プロジェクトです。
障がい者作業所での作業工賃が安すぎる現状を改善するため、単純な工程が中心の軽作業ではなく、一般のマーケットで売れる自主生産品開発を支援しています。
地域の資源・特性を最大限に活かしたものづくりをサポート
墨田区の特徴の一つに、一次産業がないことがあげられます。つまり、特産がなく自主製品が作りにくいという環境です。しかし、すみのわプロジェクトは、もう一つの特徴でもある繊維、印刷、金属加工、皮製品などを扱う中小企業が多いことに着目します。
雑貨づくりで課題となっていた材料費のコスト削減は、工場からでる端材・廃材を調達して、雑貨の材料として各作業所で活用することにより解決ました。これにより、作業所にとっては材料費が削減できた分、障がい者の方々への工賃をあげることができ、中小企業にとっては、産業廃棄物の処分にかかっていた費用を削減し、両者にとってよい循環がつくれました。
すみのわプロジェクトが発足して3年。これまでひたすら作業するだけだった障がい者の皆さんの中には、無印良品で定期的に開催している雑貨づくりワークショップで、お客様に作り方を教えることができるようにもなった人も出てきたそうです。
目指すは「自主生産品づくり支援センター」
地域ぐるみで障がい者作業所でのものづくりの可能性を広げたすみのわプロジェクト。全国からの視察も多く、同様の取り組みを各地に根付かせるためにも、關さんはこれからのすみのわプロジェクトのあり方をこう見据えます。
「デザイナーに限らず、適材適所に専門家を派遣して各作業所の福祉士をサポートする。その上で、地域の廃材調達から、商品の生産管理、販路拡大の営業まですべて請け負える『自主生産品づくり支援センター』を目指すべきだと思っています」
作業所の持続可能な経営のあり方を考えるマネージャーでもあり、障がい者の方々の持つ創造性を引き出すモチベーターでもあり、商品の展開先を開拓するマーケッターでもあるといったように、実にマルチな才覚を発揮されている關さん。勉強会当日は、絵葉書やイアリング、ヘア小物などすみのわプロジェクトのコレクションをたくさん持って来てくれました。その場で販売会となり、障がい者の皆さんの几帳面さと根気強さの賜物のような素敵な雑貨に、受講生の皆さんも興味津々でした。毎回恒例のおみやげは、今回初めて食べ物ではなく雑貨をセレクト!墨田区内のスケッチブック製造会社で生じた廃材から作ったメモ帳は、どれを選ぶかホント迷ってしまうほど愛らしい表紙ばかりでした。
スカイツリーやすみだ北斎美術館など、クールジャパンを象徴する観光拠点で、地域の資源を最大限に活かしながらキラリと光るプロダクトを世に送り出すすみのわプロジェクト。下町観光にお越しの際は、おみやげ代わりにぜひ探してみて下さい。
次回は12月8日金曜日!
次回12月8日(金)はいよいよ最終回です。千葉県木更津市の障がい者作業所で制作した雑貨やフェアトレード商品を扱った店舗も併設したカフェ“hanahaco”を経営する、NPO法人コミュニティワークス代表・筒井啓介さんにお話いただきます。hanahacoでのノウハウをお聞きしながら、それでは横浜でエシカルな商品を取り扱うショップを立ち上げるとしたらどんな場にするのがいいか、皆さんとご一緒に考えたいと思います。後半は、ご参加の皆さんと一緒に横浜・神奈川のおすすめ商品などの情報交換をしながら、試食会をしたいと思います。どうぞお楽しみに!
▼参加申し込みはこちらの下方、エントリーフォームより!
http://massmass.jp/project/ethical_school2017/
text きむら・まき
photo ほりごめ・ひろゆき