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イベントレポート|お金という手段をつかってどこへ行きたいか。小野邦彦さん、高場秀樹さんに「資金調達」について聞きました。

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ソーシャルネクスト、ラウンドテーブル3ではソーシャルビジネスの持続可能な資金調達のあり方をテーマに行われました。
 
社会課題を解決するためには、継続的に事業を進める組織基盤と多様なニーズに対してアプローチする柔軟性が重要になります。
事業やサービス自体に共感を得られても、それを持続させる基盤づくりをすることがソーシャルビジネスに取り組むうえで求められています。
 
ここでは、株式会社坂ノ途中代表取締役の小野邦彦さん、一般社団法人こどものホスピスプロジェクトの高場秀樹さんをゲストにお迎えして、事業をどのように進めてきたのかお話いただきました。ファシリテーターはNPO法人西湘をあそぶ会代表の原大祐さんが務めました。
 
 

どこを目指しているか。まずは目的を明確にすることが重要

小野邦彦さん
1983年奈良県生まれ。京都大学総合人間学部卒業。学生時代はアンティーク着物にハマったり、休学してアジア圏を旅行したりと、
好きなことばかりしていた挙句、専攻していた文化人類学の奥深さに気づき、ラスト一年だけちゃんと勉強する。そんな日々の中で、自分が
本当にしたいことは人と自然環境との関係性を問い直すことなのだと思い至り、有機農業にその可能性を見出す。2年余りの外資系金融機関
での”修業期間”を経て、2009年株式会社坂ノ途中を設立。
◎株式会社坂ノ途中

 
まずはゲストの自己紹介を兼ねてそれぞれの事業を紹介するプレゼンテーションからスタート。
株式会社坂ノ途中は、野菜の通販をはじめ、農業に関わる事業を展開しています。プレゼンのなかで、一貫して伝えていたのは、「環境への負担が少ない農業を広めること」を目指しているということでした。
 
 
主な特徴は、農薬・化学肥料を使わないオーガニックな野菜を扱っていること、年間400種類を超える農作物を取り扱っていること、そして取引している約200件の農家のうち9割が新規就農者であるということです。2トンの人参を用意することは難しくても、6種類の人参ならすぐに用意ができるんだそう。
 
 
「設立当初は地域で地域の農家を支えるような、小さいモデルをつくって、それを全国に広めようと思っていました。ただ、実際にやってみると思うような反応が返ってこないこともあり。
そこで、自分たちで社会的インパクトをだせるような規模の会社になろうと考えて、4年前にコミュニティビジネスのような動きからベンチャー企業のような動きに変えてきました。」

 
 
そして2014年から2016年までに2度の資金調達をしています。
プレゼンの最後で小野さんのお金についての考え方を伝えてくれました。
 
「そもそも、お金は手段なので、その手段をつかってどこへ行きたいのか、目的が大事です。それが不明瞭のままお金を使うのは難しい。どこへ行きたいか、先に目的を明確にすることがとても重要です。」
 
 

どんな状況にある子供でも普通の子供と同じような経験ができる場所づくり

高場秀樹さん
1968年京都生まれ。東京在住。一般社団法人こどものホスピスプロジェクト代表理事。(株式会社ワントゥーテン取締役。株式会社
ナインブロック代表取締役社長)24時間見守りが必要な子どもを授かり、生き辛さや孤独を感じる中、2009年、英国の子どもホスピス
を知る事となる。そこには、地域で暮らす人々が、当たり前に支え合う成熟した文化が根付いていた。日本に無いなら作ろうという思い
から2010年に団体を設立。地域における小児緩和ケアをテーマに地道な活動を続ける。2016年、大阪の鶴見緑地公園にTSURUMI
こどもホスピスを開業。現在に至る。
◎TSURUMIこどもホスピス

 
続いて、大阪市でTSURUMI こどもホスピスを運営している一般社団法人こどものホスピスプロジェクトの高場さん。
実はIT企業の経営者という側面も持っていて、TSURUMI こどもホスピスの運営自体はボランティアで関わっているそうです。
 
そもそも「TSURUMI こどもホスピス」を高場さんが設立することになったキッカケは、2009年にイギリスで行われたシスターフランシスさん(世界で最初の小児ホスピスを設立した人物)のトークイベントに参加したことだそう。
そのイベントでシスターが述べた「できるところからはじめてください」という言葉通り、帰国後、日本での小児ホスピスの立ち上げに関わりはじめたそうです。そして、2010年に医師たちが発起人になり一般社団法人を設立し、高場さんもジョインされました。
 
開設する際には建設費を含めおよそ6億円が必要だったとのこと。その費用は株式会社ユニクロや自治体の支援を受けながら資金を集めたそう。
 
 
「命が限られる、命が脅かされる病気の子供たちが日本にはおよそ2万人います。そういう子供たちを対象にしているTSURUMI こどもホスピスは病院ではなくお家に近いです。どんな状況にある子供でも普通の子供と同じような経験ができる場所です。地域に根ざしたプロジェクトとして、財源は寄付にたよっています。」
 
 
スライドでは施設の写真をたくさん用意してくださいました。プレイルーム、リビングやキッチンなどの設備があり、雰囲気も明るく高場さんがおっしゃっている通り、病院ではなく温かなお家のような印象を受けました。
 
 

社会課題解決型のビジネスは、助けたい人に助けてもらう時期がある

ここからは、進行の原さんからゲストのおふたりへ質問を投げるかたちでトークセッションがはじまりました。
 

 
原さん  このラウンドテーブルのテーマが「資金調達」になっているので、それぞれ資金調達したときのことをお聞きしてもいいでしょうか。
 
小野さん  1度目にしたときは、創業から6年目でした。お金はあれば使いますし、なくてもどうにかやっていけるというくらいのマインドが良いと思います。
なぜ資金調達をしたのかというと、自分たちで社会的インパクトを出せる企業を目指したときに、いて欲しい人にきてもらえるようにするためです。
 
原さん  高場さんの場合は、“できることからはじめる”なかで、どのように人を巻き込みながら6億円の建設費を集められたんですか?
 
高場さん  建設費がおよそ4億5千万円で、運営費の3年分をあらかじめ確保しながら、寄付者を積み上げていきました。運営には年間5500万円が必要ですが、現在はそのうち4000万円を寄付が集まっています。
 
原さん  今後はどう伸ばしていくんですか。
 
高場さん  先日開かれた大阪マラソンのチャリティ支援先になっていて、おそらく1000万円くらいの寄付がある予定です。そういった機会もいかしつつ、自分たちの取り組みに関心ある人はどういう人なのか、どこに行けばアクセスできるのか。そういう仕組みをつくっています。
またサポーターカフェも毎月開催して、ピラミット状に関心ある層からコアファンの層ができています。
 

原大祐さん1978年生まれ。神奈川県大磯町にてまちのリノベーションに取り組む。 荒廃農地の再生プロジェクト「僕らの酒」、「正月に
箱根駅伝を見ながら無農薬こたつみかんを育てるプロジェクト」、港・海水浴場の再生として漁協直営の食堂「めしや大磯港」、水産加
工業「湘南定置水産加工」、「大磯 港の直売所」、「大磯市(いち)」、「砂浜ビアガーデン」、空き店舗再生として「OISO1668」、「つきやま 
Arts&Craft」などのプロデュースを行う。
◎NPO法人西湘をあそぶ会

 
原さん  最初のスタートアップからプロジェクトを立ち上げていくところも教えてください。
 
高場さん  大阪市立総合医療センターという少し大きな基幹病院に務めている医師や看護師のうち、医療現場に問題意識を持っている人たちがいました。そういう人たちと、まずは地道にイベントを開催したり、病室に『遊び』を届けたり。一般の子供たちに届けることでトレーニングを積んで、徐々に重たい病気の子供たちにもそういった『遊び』を届けていきました。
 
小野さん  立ち上げ時の人の巻き込みかたについては、1つポイントがあって、自分が大事だと思ったのはどこを突破したいかを明確にすることですね。創業時、自分は25歳だったので、漠然と農業で良いことをしたいと言ってたら、「一緒にやろうよ」といろんな人が声をかけてくれました。ただ、言い方はよくないですが、そういう声に振り回されちゃいけないんです。どこを突破したいかを明確にしておかないと、いろんな人の善意に潰されてしまうんです。とくにこの分野での起業は。
 
例えば、農業だったら地産地消やろう、京野菜のプロモーションやろう、食育やろう….という具合に声をかけていただきます。でも自分がフォーカスしているところはとても狭いんです。農業は多面的ですが、そのうち自分たちは環境を含むインパクトが大きいところに絞っています。具体的には、新規就農をする人を増やすための販路に注目していて、少量だけど品質が良いものを適切な値段で売れるようにしています。
 
ここまでしっかりと旗が立つと、苦しいときに誰かが助けてくれるし、いい人材も入りやすくなる。なので、お金よりもこっちの方がとても重要なんです。
 
原さん  人参を2トン集めるより、6種類集めるというのもすごいユニークだと思ったんですが、新規就農者を集めるのに苦労したこともあると思います。そのあたりのエピソードがあれば伺いたいです。
 
小野さん  社会課題解決型のビジネスを志す場合は、助けたいと思っている人に助けてもらう期間が必ずあります。自分たちの場合は、新規就農者を支えたいと思ってはじめたけど、最初はよく分からない若者が聞きにきて、正直めんどくさかったと思います。おそらく彼らは経営が大変なのにも関わらず、自分たちを信頼して時間を割いて話を聞いてくれたんです。自分たちはそれを甘んじて受けて、受けた恩を忘れずに返そうという想いで事業を進めていきました。
 
原さん  高場さんはこどもホスピスの活動はボランティアということですが、それを続けているモチベーションはどこにあるのでしょうか。
 
高場さん  どうしても抗いようのない病気の子供が目の前にいて、親もそうだし、私たちも医師たちも一生懸命、美しい愛に溢れた時間が流れています。やっていることは、何気ない家族の時間なんで、ゲームしてたり、絵本を読んだり。子供らしい時間なんですが、そこに流れているのは愛しかない。
地域にそういう場所が増えるとすごい豊かだなと。
 
原さん  おふたりのお話を聞けば聞くほど、お金は後からついてくるじゃないけど、やっていることが社会にどれくらい価値があるのか、そこがデザインされていることが大事なんだと。そこで、賛同をえることも必要だと思うんですが、社会に向けてどういうコミュニケーションをされていますか?
 
小野さん  たしかに共感を得ることは大事です。ただ、アンケートを取ると1番はやはり美味しさ。4つ目くらいに事業への共感がきます。だから共感を得るのは大事だけど、サービスを高めることを徹底してやっています。
 

 
最後の質問タイムも時間いっぱいまで質問が途切れることがなく、ゲストのおふたりにも最後までお答えいただき、熱気に包まれたまま時間が過ぎていきました。
 
ソーシャルビジネス分野でも商品力やサービスの品質は高めつつ、ときにクリエイティビティ溢れる解決策も必要だと感じるトークセッションになりました。
ありがとうございました!
 
 
 
各ラウンドテーブルのレポートも随時公開していきますので、お楽しみに!!
▼基調講演&市内事例のレポートはこちら!
▼ラウンドテーブル①のレポートはこちら!
▼ラウンドテーブル②のレポートはこちら!
▼ラウンドテーブル③のレポートはこちら!
▼ラウンドテーブル④のレポートはこちら!

 
 
Photo : arata haga
text : hiroyuki horigome

 
 

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