2018年11月30日に、社会課題解決に興味のある事業者や市民が共に学び・交流することを目的に「ソーシャルネクスト2018 YOKOHAMA」が横浜で初めて開催されました。
横浜市はこれまで社会課題の解決にビジネスの手法を用いて取り組むソーシャルビジネスの起業や成長を応援してきました。
今回のフォーラムでは、株式会社フェリシモの矢崎和彦さんの基調講演に始まり、横浜市内で活躍する2つの事業者による市内事例発表。後半は2つの会場に分かれて、「ソーシャルビジネスの社会的価値と展望」「介護と福祉の現場から学ぶ事業と協働のデザイン」「ソーシャルビジネスの持続可能な資金調達のあり方」「ソーシャルビジネスの資金的支援のしくみとそのインパクト」4つのラウンドテーブルを行い、それぞれの登壇者と参加者による熱いトークセッションが展開されました。
▶︎ソーシャルネクスト2018 YOKOHAMA
たくさんの方々にお集まりいただいた当日の様子をお届けします。
ともにしあわせになるしあわせ-1000万人で未来を変える-
基調講演のテーマは「ともにしあわせになるしあわせ-1000万人で未来を変える-」。株式会社フェリシモの代表取締役社長である矢崎和彦さんにご登壇いただきました。
株式会社フェリシモはカタログを作り、自社の商品メインに、独自の視点でセレクトした国内外の商品やサービスを自社通販サイトで販売をしています。
事業を進めるうえで、継続的、発展的な活動を可能にする「事業性」、オリジナリティーを追及する「独創性」、社会への貢献を追及する「社会性」、これら3つの要素が交わる領域での活動を目指しています。
矢崎 和彦さん 1955年生まれ。1978年学習院大学経済学部卒業。2005年神戸大学大学院経営学研究科修了。大学卒業と同時に株式会社ハイセンス (現・株式会社フェリシモ)入社。1987年代表取締役社長就任。経営理念「しあわせ社会学の確立と実践」と中核価値「ともにしあわせになる しあわせ」の下、「事業性×独創性×社会性」の同時実現をめざす経営を実践している。神戸商工会議所2号議員、神戸経済同友会代表幹事 (2007年4月から2009年3月)、これまでに神戸市デザインアドバイザリーボード、神戸商工会議所デザイン都市推進委員会委員長、日本 マーケティング学会理事、神戸大学大学院経営学研究所非常勤講師などを歴任。2010年に毎日経済人賞を受賞。 ◎株式会社フェリシモ
矢崎さんは、「ともにしあわせになるしあわせ」という経営理念を掲げています。その背景には、「人を幸せにする幸せ」という考えがありました。
お客様は買うためだけに生きているわけではないと話す矢崎さんは、質の高い商品やサービスを提供するだけではなく、「ともにしあわせになるしあわせ」の共創を目指して、フェリシモ神戸学校やフェリシモの商品を届ける段ボールのデザインの募集、インドでの綿花栽培事業など、お客様と一緒に進めていくプロジェクトもあるそうです。
また、最近では、「より良い未来のためにリレーを繋いでいく」というコンセプトで“RELAY”という事業も開始。仕事とは、誰かの幸せに貢献する行為であるという矢崎さんは、職業の数が減少していく中で、日本を世界一職業の多い国にすることを目指し、次の世代にも残したい事業を積極的に支援しています。
最後に、ソーシャルビジネスに関心のある参加者の皆さんへ矢崎さんがどのようなスタンスで事業に取り組んでいるのか、伝えていただきました。
「世の中は効率、スピードが求められているのが現状です。しかし、それでは生きづらく感じます。合理性が求められるシーンが多いなかで、私たちは多種多様なレンズで社会の幸せを提案する会社を目指して、試行錯誤を繰り返しながら日々事業を行っています。」
様々な社会課題をコラボさせることで新たな解決策や価値を生み出す。
橋爪 智子さん 身体障害者補助犬法成立の準備からボランティアとして関わり、2002年補助犬法成立時に京都から上京し現職。日本唯一の 「犬の訓練をしない」学術団体の事務局長として、補助犬に関するアドボカシーと理解促進・普及啓発業務に従事。補助犬を取り 巻く環境や、障害者施策の大きな変動に伴い、常に必要とされる団体のあり方を模索しながら活動を続けてきた。2014年専務 理事就任を機に、法人の舵取りを大きく転換。現在も、補助犬議連事務局としてのアドボカシーを続けながら、全国向けのUD情報 の発信とともに横浜市内での活動にも力を入れ、新しいチャレンジを続けている。 ◎NPO法人日本補助犬情報センター
市内事例の発表のスピーカー1人目は、NPO法人日本補助犬情報センターの橋爪智子さん。
一昨年、横浜市経済局が企画しているソーシャルビジネス創業・成長支援事業のひとつ「ヨコハマイノベーションスクラムプログラム」に採択されたことがきっかけで横浜での活動も加速していったそうです。
身体障害者補助犬法は2002年に施行されましたが、多くの人々が補助犬法のことを知らず、社会に受け入れられていない現状があります。その状況をなんとかしたいと事業が立ち上がったのがNPO法人日本補助犬情報センターです。
「そもそも補助犬の目的は、障がいのある人の暮らしを補助し、QOLの向上に貢献することです。私たちは、補助犬を通した情報発信をすることで、補助犬ユーザーと補助犬、ひろく障害のある方、サポートの必要な人のQOL向上に寄与したいと考えています。」
いくつか行なっている事業の中から、今回は障害者理解を深めるために行っているプロジェクトについてご紹介いただきました。
日常で障がいのある方と接点を持つの難しい。
それでも障がい者理解を深めるには、一人ひとりが障がいとは何かについて感じ、考えることが必要という橋爪さん。
団体として商業施設でイベントを開催したり、ホテルや鉄道会社とタッグを組んで当事者と一緒にワークショップや、盲導犬ユーザーアテンド体験のプログラムを行っています。
また、横浜の共振印刷さんとコラボして、“ありがとうシール”を作成。
当事者の方が何かサポートしてもらったら積極的に感謝の気持ちを伝えられるよう“ありがとう運動”という活動も行っているそうです。
今後の展開について、物質的な欲求から精神的な満足を求める時代になるなかで、様々な社会課題をコラボさせることで新たな解決策や価値を生み出すことができるのではと考えを発表してくださいました。
顧客価値は有形価値だけではなく無形価値をいかに作っていくか。
鎌田友和さん 2000年、横浜市内に本社を置く不動産ベンチャーに就職。28歳の時、起業を決意したが、何のための起業なのか模索し、起業を取りやめ 「ワクワク」という生き方を決める。その後、最年少事業部長として、事業構造改革を実施しV字回復させる。2013年、株式会社和久環組を 設立し、代表取締役に就任。「日本住を、愉快に!」をテーマに、IT×リアルを融合したリノベーションプラットフォーム「リノベ不動産」の全国 展開を進め、スタートから3年半で全国200拠点超を展開し、QOL革命を起こすべく業界の枠組みを超えた挑戦をしている。 ◎株式会社和久環組
市内事例の発表のスピーカー1人目は、株式会社和久環組代表取締役の鎌田友和さん。
世界各国と比較して、日本人は仕事に対してネガティヴな印象を持っている人の割合が多いそうです。
「日本は139位中132位。
これは仕事に対してポジティブなイメージを持っているかどうかのランキングです。
日本は仕事に対してネガティブなイメージを持っている国民の割合が圧倒的に多い国です。悩んでいる子ども達がいたら、大人たちの明るい顔とエネルギーを与えてあげられるような社会を事業を通して実現して行きたいと思っています。」
株式会社和久環組が行っている主な事業は、中古住宅のリノベーションです。
空き家が増加している一方で、暮らしへのニーズも多様化しています。
中古住宅のリノベーションは自由なデザインが可能ですが、煩雑な工程がありなかなか難しい現状があります。
それを株式会社和久環組が全て担うことで実現可能にしていく仕組みがあることが強みだそう。
また、アウトドアブランドSnow Peakをはじめ、多分野との協業で、住宅というハードだけでなくお客さまの暮らしの向上を意識してて事業を行われています。
「3年後には1万件リノベーション物件を増やしていくことを目標にしています。お客様の多様化していくニーズに答えていく事が難しく何よりも大事だと思っています。不動産業はQOL事業だという風に思っています。顧客価値は有形価値だけではなく無形価値をいかに作っていくかが大事だと思います。
未来のために、そして子供のためにこれからも事業をして行きます。」
各ラウンドテーブルのレポートも随時公開していきますので、お楽しみに!!
各ラウンドテーブルのレポートも随時公開していきますので、お楽しみに!!
▼基調講演&市内事例のレポートはこちら!
▼ラウンドテーブル①のレポートはこちら!
▼ラウンドテーブル②のレポートはこちら!
▼ラウンドテーブル③のレポートはこちら!
▼ラウンドテーブル④のレポートはこちら!
Photo : yuji tanno
text : hiroyuki horigome